英語ゼミ --学生の要約と感想--
MVPのみ掲載(MVP不在時は全員分掲載)

2014/7/28   Inserts thermal coupling analysis in hexagonal honeycomb plates used for satellite structural design

M1 毛利正宏
-要約-
ハニカムパネル内の隣接した2つのインサート周りにおける熱結合の挙動を調査するために,有限要素法を用いた熱解析が行われた.解析モデルはMSC Software製Partranにて製作され,解析には実際の機体を再現する複数の境界条件が用いられた.熱解析により,隣接したインサートは熱的な干渉を引き起こしているということが示された.インサートの間隔とその熱干渉は人工衛星の搭載機器に対して重要な影響を及ぼし,機器の機能停止を引き起こす可能性があるということが証明された.この解析結果は,設計者が設計を改良するための良い手助けとなるだろう.
-感想-
インサートを有したハニカムパネルの熱解析により,インサート間の熱干渉の存在を明らかにした点および今後の設計方針を決める指針を示した点を評価したい.しかし,解析結果を示す図に対する説明が不十分であり,また境界条件に対して記述と解析結果に不一致が見られたため,より詳細な考察を加えるべきではないかと感じた.

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2014/7/14   Analysis of the constant B-number assumption while modeling flame spread

M1 斎藤勇士
-要約-
自然対流下での固体燃料の燃え広がり火炎予測において,B-number(以後,B )を一定値として扱うことは不適切であることを指摘した.消炎距離を用いた実験的な計測によってB を算出し,Bが位置と時間によって変化する関数であることを確認した.さらに,B から算出される火炎長さは,先行研究と比較された.従来用いられてきた断熱B から算出される火炎長さは過大評価されるのに対し,本実験で得られた火炎長さは実験値との十分な一致が確認された.結果,B を位置と時間の関数として扱うが有効であることを実証した.
-感想-
実験時間がおおよそ200秒から250秒であるのに対し,p.411の平均時間を350秒として扱うのは明らかに間違っている. χの値の選定,χp の計測方法は記載されておらず明確に記述するべきである.乱流遷移域として扱われる火炎長さも統一するべきである.また,読者に誤解を招く単純なミスが散見された.

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2014/7/07   Scale effect of fuel regression rate in hybrid rocket motor

M1 川端良輔
-要約-
燃料後退速度におけるスケールの影響はハイブリッドロケットを大型化していく中で考慮しなくてはいけない.本稿では,スケールの影響を加味した燃料後退速度式の理論モデルが提唱された.その理論モデルの妥当性を評価するために,数値解析の結果および実験結果との比較がそれぞれ行われた.比較の結果はどちらもよく一致し,燃料後退速度は燃料ポート径の-0.2乗に比例することが証明された.そして等価燃料後退速度モデルを用いることによって,燃焼過程の中でポート径のスケールの影響が考慮されなくてはいけないことも明らかになった.
-感想-
数値解析結果だけでなく多くの実験データを用いて理論モデルの妥当性を検討した点では評価したい.しかし類似した考察が何回も繰り返し述べられている印象を受けた.また結論が簡潔で,定性的な評価しか行われていないので,理論モデルとの比較を行う際に誤差評価を加えて定量的な考察を行うのが適切ではないかと感じた.

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2014/6/30   Detonation re-initiation mechanism following the Mach reflection of a quenched detonation

M1 亀山頌太
-要約-
半円筒周りのデトネーション回折を利用し,マック反射直後のデトネーション再開始のメカニズムを明らかにする実験が取り組まれ,2つの光源とダブルフレームカメラにより可視化を行った.反射波が3重点に達し4重点となる新しい流れ構造が観測された.再開始にはマックステム後方に形成されるジェットが重要な役割を果たしており,数値シミュレーションの結果とも一致した.マックステムが強い場合はマックステムに沿って自己着火することも確認された.一方で,未燃焼火炎構造が局所的な不安定性やホットスポット形成を示すのは未解明である.
-感想-
デトネーション波の回折を利用したラージスケールでの可視化により,新しい流れ構造である「4重点」を観測できた点,およびマッハ反射直後の再開始では壁面噴流が重要な役割を果たしていることを明らかにした点を評価したい.一方,伝播限界ではない条件でスピンデトネーションが観測された考察を加えるべきであると感じた.

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2014/6/23   Structure and thermal control of panel extension satellite (PETSAT)

M1 尾形明仁
-要約-
パネル展開衛星(PETSAT)は数枚の「機能パネル」からなる.特有の機能を有した各パネルを組み合わせ,さまざまなミッション要求を解決できる.開発には4つのインターフェースが必要だが,今回は機械と熱に注目した.機械の論点はパネル構造と展開機構である.構造は軽い重量,機器のための十分なスペース,高い剛性をもつように設計,展開機構は信頼性向上のためにシンプルな機構とした.熱へのアプローチはパネル内とパネル間の温度の均一化であり,それぞれヒートレーンプレートと磁気ヒートポンプつき磁性流体ループによって実現される.
-感想-
衛星の熱制御にヒートレーンプレートと磁気ヒートポンプつき磁性流体ループを用いようというのは初の試みだと思われるので評価したい.全体としてざっくりと記述されている印象が強く,ポアズイユの式からどのようにして輸送された熱量を得るかなどに関して,もう少し計算の過程を詳しく書いてくれればありがたい,と感じた.

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2014/6/02   Extinction of Turbulent Flames by Kolmogorov Microscale Turbulence

M2 縄田和也
-要約-
乱流ひずみが多孔質円筒前方に形成される対向流拡散火炎の構造,挙動に与える影響について調査を行った.乱流火炎においての消炎は平均流れ場の速度勾配とコルモゴロフの時間スケールによってモデル化された伸長率の合計値(総伸長率)が層流火炎の消炎時の速度勾配と一致した時に起こった.総伸長率が上昇するに連れ,火炎は薄くなり,乱流火炎を形成する火炎片の最大温度の低下により乱流火炎の最大温度は低下した.火炎全体の消炎間近では,局所かつ間欠的な消炎が起こり急激な温度低下と温度振動の上昇が観察された.
-感想-
乱流拡散火炎の消炎観察において,これまでに提唱されてきた理論に基づいた消炎限界を観察することが出来た点は評価できる.乱流発生装置によって発生する乱流はレイノルズ数が低いため,乱流拡散火炎の状態については議論の余地があると感じた。また,「Strain rate」と「Stretch rate」が混同しているなど紛らわしい点があった.

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2014/5/26   Comprehensive visualization of detonation diffraction structures and sizes in unstable and stable mixtures

M2 菊地敬太
-要約-
可視化実験により,二次元デトネーション波の回折と再開始における形状と特性長さを明らかにした.安定な混合気と不安定な混合気を用いて実験を行い,MSOP法による観察を行なったところ,再開始による扇状構造を除いて,混合気の安定性によるデトネーション波の回折の形状と特性長さの差異は認められなかった.また,流路の拡大角と初期圧力を変化させて実験を行い,シャドウグラフ法による観察を行なったところ,流路の拡大角が60°以上の場合,壁面反射距離は混合気の安定性によらずセル幅のおよそ10~15倍となることを明らかにした.
-感想-
MSOP法とシャドウグラフ法を用いることで,デトネーション波の回折の仕組みを詳細に可視化して検証している点を評価したい.また,安定な混合気での数値解析によって実験結果と非常によく似た波面形状を再現出来ているが,安定性に言及するならば不安定な混合気での解析も行なって比較すべきではないかと感じた.

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2014/5/19   Experimental low-stretch gaseous diffusion flames in buoyancy-induced flowfields

M2 斎藤竜也
-要約-
低ストレッチレート拡散火炎の構造と不安定性の調査のため,通常重力場における球対称多孔質バーナーの底面燃焼を利用した実験を行った.火炎の観察にOH-PLIF法と化学発光の直接撮影を,バーナー表面の温度計測にIRカメラをそれぞれ用いた.火炎安定性ダイアグラムから2つの異なった消炎機構が確認され,限界燃料供給流速と限界燃料希釈率について先行研究と比較を行った.さらに,消炎限界近傍では火炎の多次元的な振る舞いが観察された.結果,今回の装置構成で低ストレッチレート拡散火炎を調査することの有効性が実証された.
-感想-
燃料希釈率を固定し供給流速を上げた場合に,バーナー表面の温度が上昇する理由と反応帯の厚さがあまり変化しなかった理由について考察がなされていない.一方で,数値計算によってその存在が予想され,微小重力実験でのみ実証されていた放射消炎を,通常重力場かつ比較的単純な実験装置で達成した点は評価できる.

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2014/5/12   Preparation and characterization of cross-linking PEG/MDI/PE copolymer as solid-solid phase change heat storage material

M2 國拓也
-要約-
固体-固体間蓄熱材料は,容器が不要,ガスや液体が発生しないといった非常に優れた特性を持つ一方,蓄熱温度が高いといった欠点を持つ.本研究では固体の状態で結晶構造の変化によって蓄熱を行う蓄熱材料であるPEG/MDI/PE copolymerを生成した.生成したPEG/MDI/PE copolymerに対して,分子構造の解析,結晶性挙動の解析,熱特性の解析を行い,材料物性を明らかにした.各種測定結果から,PEG/MDI/PE copolymerは固体状態で相変化を行う材料の典型的な特性を持つことが明らかになった.
-感想-
蓄熱開始温度が高温であることや吸収エンタルピーが小さいといった欠点を持つ固体-固体間蓄熱材料が多い中,蓄熱が低温で行える新たな材料は非常に画期的なものだと言える.新たな蓄熱材料の今後の実用化へ向けた取り組みとして,成型性や引張強さといった機械的性質や劣化特性などをより明らかにしていくこと必要だと感じた.

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2014/4/14   Liquid Droplet Radiators for Heat Rejection in Space (AIAA 80-9477R)

M2 高梨知広
-要約-
従来型の宇宙用ラジエーターに変わる液滴ラジエーターの実現性についての考察を行った.液滴ラジエーターの利点は,流星塵などの衝突による破壊を回避することができ,単位重量あたりの排熱量が従来型に比べて大きいためシステム全体の重量を少なくすることができる点にある.本研究では,30年間の使用でも作動流体の蒸発量が許容範囲に収まるのに十分な低い蒸気圧と想定使用温度において液相であるという特性を両立する物質の存在を確認した.また宇宙発電設備を想定した計算により,従来型のラジエーターに対する優位性を証明した.
-感想-
新しい技術が生まれたり議論を活発にするタイプの論文であると思うので受理したい.ただし,実現性を考えるために仮定している部分が多く不確かな箇所が多いのには注意が必要であり,特に液滴の放射率を0.1としているところはその根拠を書き加えるべきである.また自分の至らなさ故だが,式の導出が飛躍しすぎていると感じた.

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2014/4/09   Detonation diffraction in gases

D1 桧物恒太郎
-要約-
円管から開放空間に入射するデトネーション波の回折を実験的に観測した.シュリーレン法,多重露光化学発光画像,PLIF法の併用により詳細な定量的,定性的測定が2種の混合気,H2-O2-Ar とH2-N2O に関して行われた.H2-O2-Ar の波面構造は非常に規則的 であり,H2-N2O の波面構造 は非常に不規則であるといった特徴がある.回折後に遷移に失敗する条件で2種の混合気で大きな違いが見られた.H2-O2-Ar の波面の速度の減衰はH2-N2O に比べ非常に遅く,衝撃波面と反応面の結合が長距離にわたって維持されるといった結果が得られた.これは有効活性化エネルギーと臨界減衰時間の違いによると考えられる.
-感想-
個人的にこの研究で最もわからない点はFig. 2 にあるものすごく繊細な扱いが要求されそうな実験装置を安定して運用する方法である.ぜひ実物を見てみたい.2,3か所で誤植と思われる個所が見つかった.論文自体に間違いと思われる個所は見つけられなかった.参考文献が適当であるかは今回の準備期間では十分に調査することが出来なかった.

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2014/4/07   Analysis and testing of similarity and scale effects in hybrid rocket motors

D1 金井竜一朗
-要約-
ハイブリッドロケットの研究開発において,開発にかかる膨大な時間やコストを削減できるという点で,相似則の解明は非常に意義深い.本研究では,まず相似則の解析が行われた.解析では,1. 幾何的相似,2. 同一の推進剤の使用,3. 酸化剤質量流束とポート径との比例関係 の3点が満足されれば異なる大きさのモータの性能予測が出来ることが示された.次に異なるスケールのモータを用いた実験により解析の妥当性が確かめられた.その結果,解析による予測と実験結果とはよく一致し,支配的な現象が解析で考慮できていることが示された.
-感想-
実験室における実験結果のみを用いて実機の設計を行える可能性があるという観点から相似則解析の重要性には疑念の余地がないだろう.Fig. 8で特性排気速度効率とポート径との相関が示され,熱損失の影響について言及されている.特性燃焼室長さと特性排気速度効率との間の相関が影響している可能性もあるように思える.

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2012/4/15   Private Rocket Moves to Virginia Launch Pad for Test Flight

M2 稲場康彦
-要約-
Orbital Sciences社が開発したロケットAntaresが4月17日のテスト飛行に向け,バージニア数の発射台へ移動された.Antaresは最終的にISSへの貨物輸送を期待されている.テスト飛行では,ISSへの貨物輸送に使用する宇宙機Cygnusの重量を模倣した模型が搭載され,高度250~300 kmへ運ばれる予定である.さらに,3つのPhoneSat,Dove-1と呼ばれる超小型衛星の軌道投入を予定している.このテスト飛行が成功すれば,今年中にCygnusを用いたISSへの打ち上げが行われる.
-感想-
某国にもミサイルより,こういった宇宙事業で世間を騒がせて欲しいと思う.NASAのスペースシャトルからの撤退を機にSpaceX社を始め,多くの民間企業によるロケット開発が活発化しており,非常に興味深い.AntaresにはFalcon 9ロケットのような異常燃焼による打ち上げ停止がないように願いたい.

M2 佐々木俊也
-要約-
Orbital Sciences社が開発した新型の民間ロケットAntaresが4月17日の試験飛行に向けNASAのワロップス飛行施設に4月6日に移動された.Antaresは最終的に国際宇宙ステーションへの無人カーゴ輸送に用いる予定の無人宇宙機Cygnusを打ち上げることを期待されている.試験飛行ではCygnusのモックアップの他に4つの小型衛星も同時に打ち上げられる予定である.試験飛行が全てうまくいけば実際のCygnusカプセルを用いた宇宙ステーションへのデモ飛行が今年の終わり頃に行われるだろう.
-感想-
米国は民間宇宙開発が盛んだという印象を受けた.国内にも競争相手がいるという状況は各企業にとっても大きな刺激になるのだろう.日本はまだこのような環境とはほど遠い位置にいると感じる.MHIやIHIだけでなく植松さん達やホリエモンらがこれからの日本の民間宇宙開発を盛り上げてくれることに期待したい.


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2012/1/15   NASA seeks to lease or sell space shuttle facilities

M2 name
-要約-
2011年にスペースシャトルプログラムが終了し,2013年末にNASAは巨額を投じて作られた関連施設を維持できなくなる.そこで,NASAはケネディ宇宙センターのスペースシャトル施設や設備を宇宙関連企業に賃貸あるいは売却したいと考えている.官民の宇宙機関であるSpace Floridaは,宇宙センターに民間宇宙企業を誘致したいと考えている.NASAはすでにSpace Floridaを介してBoeingにシャトルガレージを賃貸している.Boeingは,CST-100ISS往還カプセルの組立や改修をそこで行う予定だ.
-感想-
NASAがISSへの輸送事業を民間企業に委託し,スペースシャトル関連施設を民間に手放すのは寂しく思うが,財政上やむを得ないと思う.米政府が財政を切り詰める一方で,米国民の一部はデススターの建設を要求している.NASAが費用削減のために民間企業へ事業を委託している事を,彼らが理解しているのか疑問である.

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2013/1/8   SpaceX’s Grasshopper successfully conducts a 40 meter leap

M2 佐々木俊也
-要約-
SpaceXのGrasshopperの試験機が40 mの垂直離着陸テストに成功した.試験飛行はこれまで3度ほど行われ,今回が最も高高度の試験となった.今後数ヶ月も試験は行われる予定である.これらの試験を通じてSpaceXは世界初の完全再利用型打ち上げシステムを実現する再利用型Falcon 9の開発を行っている.SpaceXは2012年初旬にそのコンセプトを発表しており,垂直着陸を用いて全ての構成要素を地球へ帰還させ,再利用する計画となっている.この計画の究極的な目的はコストを削減することである.
-感想-
使い捨てのものを作るより,長く使えるものを作るという考えには好感が持てる.完全再利用システムは是非実現してほしい.機体が少し浮き上がってすぐに着陸するというGrasshopperの試験映像はシュールなものに感じられた.どこか身近なところで似たような光景を見たことがある気がしたのは私だけではないはずだ.

M2 寺川健
-要約-
SpaceXの垂直離着陸実証機Grasshopperは離陸,40mの高度でのホバリング,そして着陸動作の一連の飛行実験を成功させた.GrasshopperはFalcon9の初段エンジンに4つの脚を取り付けたもので,SpaceXは将来的にはこの技術を利用し,完全再利用型のロケットの開発を目標としている.実用化に成功した場合,一段目および二段目ブースターはペイロード放出後,それぞれのエンジンで減速,大気圏に突入して発射基地まで滑空し、ホバリングで着陸する。その後耐熱シールド等最小限の部品の交換で再利用できるようになる.
-感想-
この構想は驚愕モノであるが,実現性については疑問な点も多い.大気圏突入に燃料タンクが耐えるためには表面の断熱材が超高温にも耐えなければならず,毎回胴体全体への再塗布が必要になり,シャトルのタイルのようにかえってコストが増してしまうのではないかと思う.しかしSpaceXの先進性に関しては本当にいつも驚かされる.


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2012/12/18   IS Russia’s Robotic Space Program Headed for a Renaissance?

M2 稲場康彦
-要約-
ロシアの宇宙関係者は月探査の計画を再燃させている.ロシアは来年,月周回機Luna-Globと着陸機Luna-Resourceの打上げを予定しており,最終的には月面基地の建設を予定している.ロシアは前身のソビエト連邦時代に3つのサンプルリターンや2つの月面探査機の打上げを始め,多くの成功を収めてきた.しかし,これらは全て35年以上前のものであり,現在では,昨年火星探査ミッションPhobos-Gruntに失敗するなど,ソビエト連邦崩壊以後かつてのマネジメントシステムや技術力の喪失が問題視されている.
-感想-
規模が違うものの,技術や知識の喪失といった問題は非常に身近でも聞いた話題ではないかと思ってしまう.miniCAMUIを始めとする多くの研究について,新たに取り組む後輩達がデータの喪失や技術の喪失といった問題に苦しむことのない伝承の体系作りというのも自分の研究の他に注意していかなければと思う.


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2012/12/11   Moon Surprisingly Battered, New Lunar Gravity Map Reveals

M2 桧物恒太郎
-要約-
NASA の双子の探査機グレイルは月の超精密な重力場地図を作成した.この地図から,月と地球型惑星の表面がこれまで考えられていたよりも激しく,深く砕かれているとわかった.火星の表面も同様と考えられ,生じた地割れに海が流れ込んで,地下には微生物を含む水が存在しているかもしれない.また,月の地下にクレーター以前に生じたと考えられる最大で長さ 480 km に及ぶ固化したマグマの岩脈が発見された.この発見は約 45 億年前に火星サイズの天体が地球に衝突し,宇宙に飛ばされた破片から月が形成されたという説を支持するものである.
-感想-
宇宙人の存在を信じる者の一人として,火星に生命が発見される可能性が残されていることはうれしく思う.しかし,火星人が描かれた作品では火星人は地球を滅ぼそうとする悪者として扱われることが多い.人間は先入観にとらわれやすいものである.火星に生命が発見された場合には先入観を持たずに受け入れるようにしたい.

M1 石山達也
-要約-
NASAの月探査機EbbとFlowによって,新しく高解像度の月の重力マップが作られた.2機の探査機を編隊飛行させ,月の重力分布によって微小に変化する2機間の距離を検知することで,重力分布を測定する.得られた重力マップから,月表面の地形だけでなく内部の構造も把握することができる.マグマが固まってできた岩脈が月の地下に存在し,それはクレータに覆われている.この事は,かつて地球の一部が天体衝突によりちぎり取られ,その欠片が合体することによって月を形成したという巨大衝突説を裏付ける一因となる.
-感想-
数年前に日本の月周回衛星かぐやが,月の裏側を撮影し,話題になった事を思い出した.かぐやが得たデータからも重力マップを作成しており,今回得られた重力マップと比較してみたが精度の差は歴然であった.月探査の主導権を奪還されたようで悔しい. 一方で,巨大衝突説を裏付ける証拠が出てきた事は喜ばしい事である.


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2012/11/6   NASA, Air Force Haggling Over Cost Sharing on Engine Project

M1 石山達也
-要約-
Aerojet社主導のロケット開発プロジェクトへNASAと米国空軍が合同で出資するという提案があるが,2者の費用分担が決まらず,交渉が行き詰まっている.Aerojet社では空軍のHydrocarbon Boost Engineの開発を行っている.新型エンジンの開発にはHydrocarbon Boost Engineの研究成果とNASAのケロシンエンジンに関する技術的成果を活用する事が検討されている.このプロジェクトで開発される新型エンジンは,ロシア製RD - 180エンジンの代替品となることが期待されている.
-感想-
2017年に打ち上げ予定のSpace Launch Systemは,地球低軌道へ70 tの運搬能力を有し,最終的には130 tになる見込みである.サターンVにおける地球低軌道への運搬能力118 tと同等以上の運搬能力であり,アポロ計画時代の様に思える.このまま宇宙開発が進めば,人類が火星に降り立つ日も遠くないと感じた.


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2012/10/30   JUPITER IS UNDERGOING MASSIVE, GLOBAL CHANGES

M2 村上翔太
-要約-
近年,太陽系最大の惑星である木星がいくつかの劇的な変化を起こしていることが最新の研究によって明らかにされた.その変化は北赤道縞と南赤道縞の色が薄くなったり消滅したりした後に元に戻った変化など木星全体にわたる規模で,これらは2009年から2012年までの観測で得られた赤外線画像とアマチュア天文学者が撮影した可視光画像から確認された.縞の変化と同時に層雲の厚さが変化していることも確認されたが,その詳細はわかっていない.今後は科学者への支援やアマチュア天文学者らの協力により研究の進展が期待されている.
-感想-
縞模様の変化の原因として天体の衝突が挙げられるが,その可能性は低いという研究者の見解が示されている.2010年以降3回の天体衝突が観測されたが,いずれも衝突天体の直径は15 m以内だった.一方で2009年の衝突天体の大きさは幅500 mだったが,それでも地球の半分程度の大きさの衝突痕を残したに過ぎなかった.今後は大気深層部の詳細な調査が必要であろう.

M2 金井竜一郎
-要約-
近年の研究で,木星が大きく変化していることがわかってきた.2009年から2011年にかけて,南赤道縞(SEB)の消失および再出現,北赤道縞(NEB)の色の変動,さらにNEB南端からの赤外放射の途絶と再出現などが観測された.一方でここ4年の間,木星はこれまで以上の小天体衝突に見舞われた.この4年で少なくとも3つの小天体が木星大気に突入し地球から観測可能な火球を生じさせた.研究者達はこれらの現象を解明しようとしており,アマチュア天文家の観測によって提供されるデータが研究の助けになると期待されている.
-感想-
2010年に起きたSEB消失には,話のネタとして天体観望会で随分お世話になった.アマチュア天文家の観測は天文学の発展を強力に支えているが,意外と世間には知られていないように思う.木星の縞は数cm口径の望遠鏡で観測できるため,連泊で疲れた心を癒しがてら防爆実験棟の前で星を見るのも悪くないな,と思った.


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2012/10/23   Pluto's Moons (and Maybe Rings) Pose Risk for NASA Spacecraft

M2 小川洋人
-要約-
冥王星の衛星が,冥王星へ探査に向かうNASAの宇宙機ニュー・ホライズンズにとって危険なデブリ領域を形成している可能性があることが分かった.今年七月,冥王星で新たに第五の衛星が発見されたが,それに伴って,衛星が形成されるような天体同士の衝突が冥王星を含むカイパーベルト内で生じ,冥王星周囲にデブリの輪を形成している可能性も示唆されるようになった.現在,研究チームは冥王星を周回するデブリを調査しつつ,危険を避けるための軌跡変更やパラボラアンテナをデブリへのシールドに使用するといった戦略を練っている.
-感想-
今のところデブリ領域の兆候は見つけられていないらしく,軌跡変更に伴うリスクも不確定なようだ.しかし,最終判断まで余裕があるらしく,研究チームも悲観的に見ていないように感じられた.第五の衛星も本ミッションのスキャン計画中に発見されたとのことで,このような副次的な部分からも多くの発見があればよいと思った.

M2 桟敷和弥
冥王星の衛星が危険なデブリ領域を形成し,NASAの探査機New Horizonsを破損させる恐れがある.New Horizonsが打ち上げられた後,冥王星に5個目の衛星が発見され,冥王星の衛星系を形成した天体同士の衝突によるデブリが冥王星周囲に環のように存在している可能性が示された.NASAは現在この危険な領域を回避し,目標を調査できる軌道を設計している.New Horizonsは約1000日後に冥王星に最接近し,この10日前には軌道を変更していなければ軌道変更に必要な燃料を確保できなくなる.
-感想-
New Horizonsの速度は打ち上げ直後で30 km/s,冥王星に接近するころには約14 km/sと非常に高速で移動しているため,数ミリ程度のゴミが衝突しただけでも探査機の破壊に繋がるようだ.今のところデブリ領域はまだ見つかっていないようなのでこのまま見つからず探査が上手く進んで欲しいと思う.


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2012/10/16   SpaceX launch problems revealed: Dragon's OK, but satellite goes awry

M2 金井竜一朗
-要約-
スペースXのファルコン9ロケットは,エンジンのトラブルにも関わらずドラゴン宇宙船をISSへ送った.第1段エンジン9基のうち1基が打ち上げ79秒後に圧力低下し,自動でシャットダウンされた.映像では何らかの破片が飛散していたが,エンジンを守る保護板が機能したためとのことである.機載コンピュータは残る8基の燃焼予定を再計算し,ISSの補給ミッションを成功させた.副ペイロードの,オーブコム社製OG2衛星は予定の軌道(高度350-750 km)には入れず,より低い軌道(高度203-323 km)に投入された.
-感想-
ファルコン9の信頼性の高さには驚くばかりだが,推進剤供給系の不安要素は早く解消されて欲しい.OG2は無事に機能していることが確認されたが搭載推進系だけでは予定軌道に入れず,軌道離脱するとのことである.技術的には軌道投入できただけに,落ちていくOG2を見ながら歯噛みする関係者の心中は察するに余りある.
M1 桧物恒太郎
-要約-
spaceX 社の falcon 9 ロケットは宇宙船 dragon を ISS に送ることに成功したが,打ち上げ時に 9 つあるエンジンのうちの 1 つが故障したことと,orbcomm 社の衛星の配備が予定通り行われなかったことから,未だ未来の飛行に向けて解決すべき問題が存在するといえる.spaceX 社はエンジンの異常の原因を理解するためにすべてのフライトデータを検討し,得られた教訓を今後の飛行に生かすために十分なリソースを投入すると述べている.また,この異常のために予定より低い軌道に投入された orbcomm 社の衛星 OG2 は搭載された推進機構を用いて本来の軌道に乗せることが検討されている.
-感想-
今回,宇宙船 dragon が2度目の ISS とのドッキングの成功を果たしたことで,民間による宇宙輸送の実現性が高まっている.spaceX 社の CEO の Musk 氏が宇宙ビジネスに参入したのは火星に相当数の人員を運ぶことが出来るロケットを開発するという目標をかなえるためだというが,このような気概を持った企業が今後も現れることを期待したい.


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2012/10/09   A curious cold layer in the atmosphere of Venus

M1 佐々木俊也
-要約-
ESAはVenus Expressによる5年にわたる観測データを新たに解析した結果,金星の上空125 kmに約-175℃の極低温領域が存在することを発見した.大気温度は大気圧データと大気を通過する太陽光を分析して得られる高度ごとの二酸化炭素濃度から求められる.高度120 kmの大気は昼側と夜側で極端に温度差があり,明暗境界上は両側の影響を受ける遷移領域となっている.モデルによって観測プロファイルの予測はできるが,高高度大気中の二酸化炭素より多く存在する化学種についても検討すれば,より確かなものとなるだろう.
-感想-
金星に地球では考えられないくらいの低温大気層があることに驚いた.太陽に近い方が単純に温度が高いとは限らないらしい.火星の気温を上げて人が住めるようにして移住する計画はよく聞くが,逆に金星の温度を低下させて移住するという話はあまり聞いたことがない.意外と金星の方に先に移住することになるかもしれない.

M1 寺川健
-要約-
ESAのVenus Expressの観測より,金星大気に-175°Cにもなる局所的な極低温層があることが発見された.金星大気は全般的には高温であり,今回の発見は地球や火星の気温分布と比べても異例といえる.太陽からの光が大気を通過する様子を観察し,昼と夜を分ける明暗境界線付近の各高度での二酸化炭素濃度と気圧から温度を計算した.この「低温層」は暖かい二層の気流に挟まれる形で存在し,また昼側と夜側の大気では全く異なる温度分布であることから,その境界付近では昼側と夜側両方の影響を受けていると考えられる.
-感想-
金星は灼熱地獄のイメージが強かったため,局所的とはいえ,地球よりも冷たい地域があることに驚いた.自転周期や大気組成が地球や火星とは全く異なるこのような環境下では従来の気象学は通用しないのかもしれない.近年は月や火星等有人探査に焦点が当てられがちだが,太陽系の他の天体にもまだまだ謎がたくさんあると感じた.


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2012/10/02   Sentinel Exclusive: NASA wants to send astronauts beyond the moon

M1 稲場康彦
-要約-
NASAは,次の主要ミッションの最有力候補として地球と月の第二ラグランジュ点での基地の建設を掲げた.これが実現すれば基地は,周辺の小惑星の研究や,基地からの月面ロボットの操作,火星の衛星や火星本体への飛行の基盤として利用される.建設は2019年から行われる予定であるが,必要とされる価格が不明瞭であり,財源を確保することができるかや,仮に不具合が生じた場合に宇宙飛行士の救出が難しく,また基地での滞在期間が不明瞭であること,基地周辺での強い放射線から如何にして宇宙飛行士を保護するかといった問題が存在する.
-感想-
火星探査機Curiosityが着陸に成功し,多くの画像が得られていることに喜びを感じる.さらに,日本でも2018年から2020年にかけてJAXAが火星からの無着陸サンプルリターンを計画しているらしく,近年非常に火星を身近に感じることができる.この基地建設を第一歩として,火星着陸を早く実現して欲しい.


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2012/07/30   NASA Moves Old Spacecraft to Track New Mars Rover's Landing

M2 村上翔太
-要約-
2012年7月24日,NASAは探査機オデッセイのスラスタを6秒間噴射させて軌道修正に成功した.この操作により新型の探査機キュリオシティの着陸の際にオデッセイを通信の中継機として利用できるので,通信障害を回避できるようになる.オデッセイは6月上旬に姿勢制御用のリアクションホイールが故障して7月11日にセイフモードに入っていたため,この軌道修正が無ければ着陸をリアルタイムで中継できない状態だった.キュリオシティの火星着陸は日本時間8月6日を予定している.
-感想-
探査機オデッセイは他のどの宇宙機よりも長く火星で任務をこなしており,火星の地表面下に水や氷が存在しているという発見の足がかりとなった探査機である.他にも,探査機スピリットやオポチュニティ,着陸機フェニックスの通信中継の役割を果たしてきた実績があるので,その実績を活かして今回も任務が成功することを期待する.

M1 石山達也
-要約-
NASAは,火星探査機マーズ・オデッセイの軌道変更を7月24日に行なった.これは8月5日に控える火星探査ローバ,キュリオシティの着陸に向けたもので,着陸の迅速な確認やキュリオシティとのデータ中継を目的としている.火星を周回している他の2機の探査機ではキュリオシティと地球との間を中継してデータを送るのに数時間かかるが,マーズ・オデッセイはリアルタイムの中継を行なえる.マーズ・オデッセイは,火星探査ローバであるスピリット,オポチュニティや火星探査ランダーであるフェニックスの通信中継も行なっている.
-感想-
NASAは,火星探査機マーズ・オデッセイの軌道変更を7月24日に行なった.これは8月5日に控える火星探査ローバ,キュリオシティの着陸に向けたもので,着陸の迅速な確認やキュリオシティとのデータ中継を目的としている.火星を周回している他の2機の探査機ではキュリオシティと地球との間を中継してデータを送るのに数時間かかるが,マーズ・オデッセイはリアルタイムの中継を行なえる.マーズ・オデッセイは,火星探査ローバであるスピリット,オポチュニティや火星探査ランダーであるフェニックスの通信中継も行なっている.


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2012/07/23   NASA'S Car-Sized Rover Nears Daring Landing on Mars

M2 小川洋人
-要約-
NASAの火星探査機Curiosityの火星着陸が8月に迫っている.Curosityでは,降下速度を制御する逆推進ロケットを備えたバックパックから吊り下げられて目標地点に降下する,「スカイクレーン」方式が採られている.1トンの探査機を自律制御により正確に着陸させることは,本ミッションで最も困難な部分である.着陸後は,火星の岩や泥のサンプルを採取して化学組成や鉱物組成,火星での生命活動維持の可能性を調査する.今回のミッションはより正確な降下と,より重い着陸船を必要とする有人火星ミッションの先駆けとなる.
-感想- 今回のミッションにおける火星探査機の着陸に合わせて,NASAはマイクロソフト社と共同で,探査機を火星に着陸させるゲームを製作したそうだ.自由の国はやることが違う.こういった遊びから実際の宇宙開発に関われるのは面白いと思った.特にゲームは興味を持つきっかけとしてとても優秀ではないか,と個人的には思う.

M2 桟敷和弥
-要約-
NASAの火星探査車Curiosityが8月6日に火星のゲール・クレーターに着陸する.Curiosityのような重量1トン程の探査車では、これまでの探査車で用いられてきたエアバッグを使った方法で着陸させることができない.そのため、着陸の最終段階では降下速度を制御する逆推進ロケットを持った降下ステージからケーブルを使って探査車を地上に下ろすスカイクレーンという手法が用いられる.Curiosityは火星に着陸し、一連の動作チェックを行った後、火星の岩石や土壌の採取、解析を行う予定となっている.
-感想-
Curiosityの着陸方式にはエアロシェルやパラシュートなどのこれまで用いられてきた方式にスカイクレーンを使った新しい方式を組み合わせた複雑な方式が用いられる.この着陸にはコンマ何秒の制御が必要であり,複雑な方式を使うことの難しさが感じられた.着陸をリアルタイムで観測できない恐れがあるそうだが無事に成功してほしい.


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2012/07/09   Voyager 1 at the Final Frontier

M1 寺川健
-要約-
35年間,太陽系外へと向かって旅を続けてきたボイジャー1号がとうとうヘリオスフィアへ到達しつつある.ボイジャーに搭載された計測機器より,2009年から2012年にかけて宇宙線量の増加が確認されていた.専門家によると,ヘリオスフィア通過後は太陽風は激減し,また太陽磁力場も影響力を失い,未だ探査されたことのない未知の磁場となる.現在のところこれらはまだ起きていないが,2012年5月に入ってからは一月で9%という急速な宇宙線の上昇が確認されており,ヘリオスフィア領域の手前まで来ていることが推測できる.
-感想-
人工天体が太陽系外に到達しかけているということもさることながら,35年間も動作を続けてきた探査機の設計・製造品質は脱帽物だと感じた.宇宙開発55年のノウハウの蓄積がある現在ですらそう簡単には探査機は作れないが,宇宙探査がはじまってからわずか20年でこのような機械を作ってしまう昔の人の知恵には驚愕する.

M1 桧物恒太郎
-要約-
ボイジャー1号が太陽系を離れ星間空間へ突入する日は近づいていると思われる.太陽圏の端に接近するとボイジャー1号に当たる宇宙線量が増加する.2012年5月7日から非常に急な線量の増加が見られたことから,ボイジャー1号は地球から180億kmの位置で太陽圏の端に到達したと考えられる.研究者たちは太陽圏の端に接近するにつれてまず他の変化が見られると期待していた.太陽からの荷電粒子の減少と,周囲の磁場が太陽の磁場から未知の星間磁場の方向に変わることだ.宇宙線の急上昇はこれらの変化が見られる日がそう遠くないことを示唆している.
-感想-
ボイジャー1号,2号には知的生命に地球とその文化を紹介するために写真や音声,音楽が記録されたゴールドディスクが搭載されている.ボイジャー1号は最長で2020年,2号は2030年には地球との通信が不可能になってしまうが,いつか地球外知的生命体にボイジャーが発見され,ディスクが再生されることを期待したい.


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2012/06/18   China to Launch 3 Astronauts to Space Lab This Month

M1 井上遼太
-要約-
2012年6月中旬,中国は,宇宙船神舟9号による小型宇宙ステーション天宮1号への有人宇宙飛行ミッションを行う.このミッションで行われる有人宇宙船と地球周回軌道上モジュールとのドッキングは,中国初となる.中国はこれまで有人宇宙飛行を3回行っている.無人宇宙船である神舟8号は天宮1号とのドッキングをミッション中2回成功させている.今回のミッションは中国の宇宙開発計画にとって大きな節目となり,このミッションが成功することで中国の宇宙船が地球と宇宙を行き来する正真正銘の有人輸送手段になることが期待されている.
-感想-
このような報道があると「日本も有人宇宙飛行を行うべきだ」という意見をよく聞くが,そこまで有人宇宙飛行にこだわる必要はないと思う.なぜなら,無人でもできることを敢えて有人で行う必要はないからだ.中国の有人宇宙飛行は国威発揚としての側面が強いと思うが,日本は別の形で宇宙開発への動機づけが必要だと感じた.

M1 佐々木俊也
-要約-
中国は長征2号Fロケットにより,3人の宇宙飛行士を乗せた神舟9号カプセルを打ち上げ,小型宇宙実験室モジュール天宮1号との自国初の有人宇宙ドッキングミッションを6月中旬に行う予定である.神舟はロシアのソユーズを元に設計され,推進船,搭乗用カプセル,軌道船の3つのモジュールから成るが,軌道船は太陽電池を備えているため乗組員が地球に帰還した後も宇宙で機能し続けられる.天宮1号は大型宇宙ステーションのひな形とされ,現在60 ton級の宇宙ステーションが開発中であり,2020年の打ち上げを予定している.
-感想-
中国の有人宇宙開発は順調に進んでいるようだ.日本は未だ自国による有人宇宙飛行をしておらず,他国のものに参加しているだけである.2020年までに独自で有人宇宙飛行を行いたいそうであるが,安全性や予算,政治的な問題があり,計画はあっても優先順位は低いようである.表彰台は逃したが,4番目の国になってほしいと思う.


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2012/06/11   Next-generation Ariane Tops Agenda for ESA Ministerial

M1 石山達也
-要約-
ESAは,次期宇宙輸送機に関して,Ariane5MEとAriane6のどちらを開発するか検討している.Ariane5MEは,ドイツ政府とAstrium社が支持しており,新しい再着火可能な上段エンジン(Vinci)を使用する.ペイロードは比較的大きく,2017年から運用可能としている.Ariane6は,フランス政府とCNESが支持しており,モジュール式の輸送機で費用を抑えて運用でき2020年に運用可能としている.両国は意見の一致のためのワーキンググループを設立し,6月末までに結論づける予定である.
-感想-
昨今のヨーロッパ経済危機から,最終的にかかる費用の安い方を最優先で開発すると考えていたが,ペイロード等の性能も顧客の満足するものでなくてはいけない.そこで,ESA長官は欧州の顧客を対象に調査をしているようだ.結局,どのロケットを採択されるかは顧客が決めることであり,日本もその事を忘れてはならないと思った.


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2012/05/28   Japan Launches Space-Cargo Push

M2 桟敷和弥
-要約-
日本は韓国の衛星を搭載したH2Aロケットを打ち上げ、43億ドルに上る商業衛星打ち上げ市場に参入した.商業衛星の打ち上げ市場には新規参入業者が多く、既存の企業は比較的低コストな打ち上げを請け負っているため、日本勢が生き残れるかという疑問も出ている.三菱重工はH2Aの打ち上げコストを大幅に削減したが、昨今の記録的な円高がこれを打ち消しており、H2Aの価格は標準の打ち上げ価格である約1億ドルを上回るという.コスト削減のため日本は次期基幹ロケットH3の開発を来年にも開始し、2022年の初打ち上げを目指す.
-感想-
H3は一部の部品をMRJと共通化する他,市販のカーナビシステムを応用することでコスト削減を図るようだ.H3の初打ち上げの頃にはアリアン6も初打ち上げが行われる予定の時期であり,次世代のロケットが揃ってくる.こうした中で海外勢ほどの実績のない日本がどのように闘っていくのか注目していきたい.

M2 村上翔太
-要約-
2012年5月,日本は世界の商業衛星打ち上げビジネスに対抗するため,出費を惜しまず初めて他国の衛星を搭載したロケットを打ち上げ,JAXAと三菱重工に商業打ち上げ市場への参入をもたらした.しかしH2Aロケットの打ち上げコストは他国の標準的な打ち上げ価格を大きく上回っているため,JAXAと三菱重工は,中型ジェット機の部品の共有や家電製品の搭載コンピュータの利用によってコストを半減した次世代のH3ロケットの開発を計画している.彼らは来年にもこの計画に取り組み始め,2022年の打ち上げを予定している.
-感想-
日本が商業衛星打ち上げビジネス参入への一歩を踏み出すことに成功したことは素晴らしい.しかし打ち上げ能力や価格競争に対抗するにはまだまだ時間がかかりそうなので何か別の面でも勝負する必要があると思う.H2Aロケットには再々着火能力があり複数の軌道に衛星を投入できるはずなので,そういう別の強みも活かせれば良いと思う.

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2012/05/21   Spaceflight Companies Team Up for Private Space Station Flights

M2 小川洋人
-要約-
SpaceX社とBigelow Aerospace(BA)社は,民間宇宙ステーションへの有人宇宙飛行を売り出すため,提携することを発表した.2社は,BA社の開発しているモジュールBA330を結合してして宇宙ステーションを構築し,SpaceX社のドラゴンカプセルとファルコン9を用いて乗客を運ぶという計画を立てている.SpaceX社の社長Gwynne Shotwellは,この長時間宇宙環境利用の事業を世界的に展開していく意向を述べており,対アジアでは日本の政府関係者との会合も計画されている.
-感想-
Bigelow Aerospace社のBA330モジュールは,2015年に試験のためにファルコン9で打ち上げ予定らしい.2016年にはロシア企業のOrbital Technologies社が宇宙ホテルを開く計画があり,宇宙が開拓されていくのを感じる.日本も民間で様々な宇宙事業を展開できればいいと思う.


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2012/05/14   Hubble to Use Moon as Mirror to See Venus Transit

M1 桧物恒太郎
-要約-
ハッブル宇宙望遠鏡を用いて,金星の日面通過の際,月に反射した太陽光から金星の大気を通過した光を検出することが計画されている.太陽系外惑星の大気観測に用いられる技術が,地球同様に生物がいる可能性のある惑星の大気のかすかな特徴を検出することが可能か試すことが目的である.ハッブル宇宙望遠鏡は金星の通過の前後7時間にわたって月の観測を行う.地球が視界を遮る間も望遠鏡を月の同じ位置に向けられるように試験観測がおこなわれるなど,今世紀最後の金星の日面通過のために調査計画は慎重に進められている.
-感想-
本文で取り上げられた6月6日に観測される金星の日面通過の他,5月21日の金環日食,8月14日の金星食など,2012年は日本から好条件で観測できる天文現象が多い.このような現象は報道で取り上げられることも多いので,今回のような簡単に天体観測を行うことができる機会に宇宙に関心を持つ人が増えてほしいと思う.

M1 寺川健
-要約-
NASAではハッブル宇宙望遠鏡を用いて太陽光の月面反射を利用した金星の日面通過を観測する予定である.ハッブルでは直接太陽を観測することができないため、金星大気を通過したのち月面に反射した光を、平常状態で反射する光の量と比較して大気通過量を計算する.観測では金星大気を通過する太陽光のスペクトル分光測定を行い、大気組成を調べる計画である.これまでスペクトル測定を用いることで太陽系外の惑星の大気が調べられてきたが、金星の大気は既知であるため、太陽系外の地球型惑星の大気観測がより高精度で行えるようになる.
-感想-
金星に注がれる太陽光のうち大気を通過して月から反射されるのは全体の1/100000しかなく、今回の観測を逃した場合2117年までは日面通過が発生しないそうだ.観測の難易度や事象の希少性は言うまでもなく、このような複雑な手法をよくも考えたものだと感心した.ラグランジュポイントに巨大望遠鏡を係留したいものだ.


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2012/05/07   Cryobots Could Drill Into Icy Moons With Remote Fiber-Optic Laser Power

M2 小川洋人
-要約-
発明家であり探検家であるBill Stoneは,光ファイバーケーブルを介した高出力レーザーによる遠隔からの電力供給技術を開発した.彼の開発するクライオボット「VALKYRIE」は, この新たな技術を適用し氷海深くまで氷を溶かし探査するための電力供給が可能となった.本機は2013年6月にアラスカのマタヌスカ氷河で試験をする計画となっている.この技術は,厚い氷の層を持つ南極の湖やエウロパやエンケラドスなどの氷で覆われた衛星の探査を,さらに新たなのロケットエンジンの実現も可能とするだろう.
-感想-
産業用レーザーと光ファイバーケーブルの最新技術を組み合わせ,誰も試みなかった新たなシステムを開発するというのは夢のある話だ.特にこの遠隔地からの電力供給技術は,惑星探査機やロケットだけでなく様々な分野で応用できるのではないだろうか.是非VALKYRIE の試験を成功させ,技術を確立して欲しい.

M1 井上遼太
-要約-
Stone Aerospace社では,光ファイバーケーブルを用いた電力供給技術を開発中である.この新技術は,細い光ファイバーケーブルで高エネルギーのレーザー光線を送ることにより,探査ローバーなどのロボットに電力を供給するものである.この新技術により,地表に設置した発電装置から地下を探査するロボットに電力を供給し,エウロパやエンケラドスのような氷で覆われた衛星にある表層下の海を探査することが可能となる.このような探査の実現にはまだ時間がかかると考えられているが,実現への課題点は徐々に解決されつつある.
-感想-
これからの惑星探査は,より多くの科学的知見が得られる地下の物質の調査も多く行われると考えられる.そのようなミッションを実現するためには,人間の判断なしに探査機自身が判断して行動できるように探査機を高度に自律化させる必要がある.日本では,はやぶさで得られた自律化技術をさらに発展させる必要があると感じた.


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2012/04/23   SpaceX On Track for April 30 Launch to Space Station

M1 石山達也
-要約-
SpaceX社は,国際宇宙ステーション(ISS)への試験飛行を許可された.NASAがISSへの貨物や乗組員の輸送を民間企業による低費用の輸送サービスに委託する計画の中で,この試験飛行は重要な節目である.SpaceX社のFalcon9ロケットとDragonカプセルは,4月30日に打ち上げられる予定である.今回の試験飛行では,Dragonの機動性,通信システム,太陽電池アレイの展開,停泊システムの実証を行う.Dragonは,5月3日から18日間ISSに停泊した後,地球に降下し,太平洋で回収される予定である.
-感想-
4月30日の試験飛行が成功すれば,今までよりも少ない運用費用でISSに物資を運搬することができるようになるだろう.それに伴って,日本のロケットも運用費用の更なる削減に迫られることが予想できる.費用削減にとらわれすぎると信頼性や安全性がおろそかになるので,十分に気を付けなければならないと感じた.

M1 稲葉康彦
-要約-
スペースX社がドラゴンカプセルを搭載したファルコン9ロケットの打上げを4月30日に行うことを許可された.ファルコン9ロケットの打上げは,2010年12月に行われたドラゴンカプセルの軌道投入以来となる.今回の打上げは,テスト飛行と位置づけられており,ドラゴンカプセルがロボットアームにより結合されるバーシングまでのシステムの確認とISSへの荷物の輸送が行われる.順調に行けば,5月3日にドラゴンカプセルがISSにバーシングされ,5月21日まで停泊し,その後太平洋に着水し,スペースX社により回収される予定である.
-感想-
先々週から何かとロケットが話題にあがる.NASAのスペースシャトルからの撤退を機に民間企業の動きが一層活発化してきており,非常に嬉しく思う.スペースX社はISSへのクルーの輸送を行うCCDevにも関係しており,今回の打ち上げに注目である.いつか民間企業によって手軽に宇宙旅行ができる未来を期待したい.


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2012/04/16   NASA Jet Stream Study Will Light up The Night Sky

M2 桟敷和弥
-要約-
NASAは高高度におけるジェット気流の調査と,この気流と地球を取り囲む複雑な電流パターンの詳細な関係を調べるため,5機の弾道ロケットを打ち上げる.この実験は高高度における気流を理解するための情報を集める他,人工衛星にダメージを与えたり,通信システムに障害を起こしたりし得る電磁領域のモデル化の役に立つ.また,大気擾乱の影響がどのように輸送されるかを説明する助けとなる.実験では打ち上げられたロケットから放出された化学トレーサーによって作られた雲をカメラで追跡することで気流の観測が行われる.
-感想-
この実験におけるロケットの打ち上げは3月27日に行われ,無事成功したそうだ.放出された化学トレーサーであるトリメチルアルミニウム は水や空気に対し不安定な化合物で,放出後は空気と反応して発光する.生成された人工雲がぼんやりと発光しながらねじれていく様子は付近の住民にとって非常に不思議な光景に見えただろう.

M2 村上翔太
-要約-
2012年3月,NASAはATREX(Anomalous Transport Rocket Experiment)実験を行い,高度96km以上にある熱圏における高速気流を調査する.この実験は天気の良い夜に行われ,5機の観測ロケットを打ち上げて高度80km付近でトリメチル・アルミニウムを放出してそれをトレーサとし,3機の特殊カメラを用いてトラッキングして大気の流れを観測するものである.この実験により,これまで不明であった熱圏における高速気流の成因への理解が進むと期待されている.
-感想-
ATREX実験を目撃した人によると,とてもエキサイティングでこの世のものとは思えない非現実的な光景だったらしい.写真を見ただけではあまり伝わってこなかったので自分も実際に見てみたいものである.日本でもこのような実験を行えば,自然と空に目を向ける機会が増えて宇宙への興味が増すのではないかと思った.


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2012/04/09   JPL Explores Sending CubeSats to Phobos

M2 金井竜一郎
-要約-
キューブサットを用いて,フォボスの土壌サンプルを地球に持ち帰るというミッション案が検討されている.研究主任は,キューブサットを用いることで現在NASAが行なっている岩石惑星探査ミッションに比べミッションコストが10分の1に削減できると主張している.光圧の利用,惑星間にあるラグランジュ点の利用,小型でかつ地球外環境に耐える電子機器,レーザ通信といった先進技術を組み合わせれば実現可能性がでてくる.キューブサットはピギーバックペイロードとしての搭載が可能であるため,高い打上げコストという問題を回避できる.
-感想-
最初記事を読んだ時には,4月1日付の記事ということもあり目を疑った.しかしミッションはほとんどが既存の技術の組み合わせであり,実現可能な気もする.テザー衛星,ソーラーセイル,スペクトルイメージングといった技術は国内の超小型衛星でも実証予定であり,UNITECの後継機には是非再び地球外を目指して欲しい.

M1 佐々木俊也
-要約-
JPLの研究者Robert Staehleらは火星の衛星Phobosの土壌サンプルのCubeStatを用いた回収ミッションを行うために研究をしている.このミッションが成功すれば,今後の惑星間ミッションのコストを現在の10分の1まで下げ,開発を短期間で行うことができるようになる.CubeSatは二次ペイロードとして利用でき,Staehle氏は研究を発展させるため,静止軌道ミッションや地球重力圏離脱ミッションの一部に利用することをNASAに薦めている.この研究はNIACが出資する30ある資金予算100,000ドルのPhase I契約の研究の一つであり,これらのうち最大で10個の団体が今夏に資金予算500,000ドルのPhase II契約をするだろう.
-感想-
宇宙機を小型化できればその予算を大幅に削減できる.こうした支出を減らす動きと共に財源を確保することも重要だ.今年,JAXAがネットでの寄付金募集を開始した.最近,マンガや特撮などで宇宙をテーマにしたものが取り上げられている.こうしたものから多くの人が宇宙開発に興味を持って,寄付してくれるようになると期待したい.


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2011/12/19   Paul Allen’s Stratolaunch: Grand plan for next-gen space travel 

M1 村上翔太
-要約‐
Microsoftの共同設立者であるPaul AllenとBurt Rutanは,次世代の民間有人宇宙旅行計画の実現のためにStratolaunch Systems社を設立した.この計画では,Boeing 747のエンジンを6基搭載した過去最大級の新型の輸送機を用いてSpaceX社製のロケットを成層圏で発射し,地球低軌道へ衛星や物資を投入することを目的としている.この輸送機はこれまでのどの輸送機よりも安全でコストパフォーマンスが良く,短時間でのターンアラウンドが可能である.最初の打ち上げ試験を2016年に予定しており,最終的には有人宇宙旅行を実現すると期待されている.
‐感想‐
フットボールコートよりも大きい巨大な輸送機を用いて空中発射を実現するらしい.まだまだ地上発射には及ばないが,空中発射用の輸送機の大型化に伴い搭載能力に余裕ができることで空中発射のデメリットが小さくなることは,今後の宇宙開発に拍車をかけるだろう.有人宇宙旅行を手軽に楽しめる時代は近いかもしれない.

M2 石川直幸
-要約‐
マイクロソフト創設者の一人で,億万長者のポールアラン氏が12月13日に次世代有人宇宙旅行の計画を発表した.アラン氏が以前スペースシップ1の製作で協力したバートルータン氏と新会社ストラトランチシステムズ社を作り,巨大な輸送機と多段式ロケットで構成される次世代打ち上げシステムを完成させる.輸送機の翼幅は380フィートにもなると予想され,ボーイング社の747航空機に使用されているエンジン六機を動力源に飛行する.製造はスペースシップ2やホワイトナイト2と同様,ルータン氏のスケールドコンポジット社があるカリフォルニア州モハーヴェの宇宙港で行われる.
‐感想‐
ビデオや関連記事を見る限り,以前製作されたスペースシップ1を大きくしたものに見える.スペースシップ1は高度100kmまで到達したが,今度のストラトランチシステムでは地球低軌道にロケットを投入できるようになるようで,今後の展開に注目したい.堀江貴文氏も宇宙開発をしているが,宇宙開発ベンチャーははやっているのだろうか.

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2011/12/12 Mars rover gets 'engine' upgrade: Curiosity fueled by nuclear power  Spaceship Website  second test fire

M1 金井竜一郎
-要約‐
キュリオシティと名付けられた火星探査ローバが打ち上げられる.キュリオシティ歯既存のローバが積んでいた太陽電池の代わりに10.6ポンド(4.8kg)の二酸化プルトニウムペレットを積んでいる.このシステムは,日光が弱かったりミッション要求がきつかったりするせいで太陽電池が非実用的な時でもローバの活動を可能とするよう設計されている.射場での事故により放射性物質が放出される可能性は420分の1であるが,射場近辺にいる個人の健康に影響が出る可能性は100万分の1未満である.プルトニウムの備蓄量は減っており,コストの面等で生産の再開が難航している.
‐感想‐
地球上でソーラーカーや太陽電池パネルが生活を根本から支えているかと言われればそんなことはなく,あくまでも補助的なものにしか過ぎない.そう考えると,太陽電池の身を用いた探査はかなり困難だろう.それでもこんなに原子力電池を用いた探査機が多かったとは知らなかった.リスクが過剰に報道されないよう見守る必要があるだろう.

M1棧敷和弥
-要約‐
11月26日土曜日,NASAは火星探査車Curiosityを打ち上げる.Curiosityは火星探査車として初めて原子力電池(RTG)を電力源に使用しており,太陽光が非常に弱い場合や宇宙船のミッションが厳しく太陽電池が実用的でない場合にも運用が可能である.RTGに使用されるプルトニウム238はアメリカでは1988年に製造が止まっており,2010年から再び生産を開始するための取り組みが行われているが,予算の問題から停滞している.そのため,RTGを使用するミッションが10年後にはできなくなる可能性が懸念されている.
‐感想‐
Curiosityには着陸位置を素早く特定し,周囲の状況を調べるためにパラシュート降下中に地表を毎秒5回撮影する小型カメラが搭載されている.このシステムはフェニックスにも搭載されていたが発射前に問題が生じ,修理が間に合わなかったために結局使用されなかった.そのため,今回はぜひとも成功してほしいと思う.

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2011/11/28 Amazon.com's Jeff Bezos Relaunches Secretive Private Spaceship Website  second test fire

M2 野原正寛
-要約‐
コーヒーマグほどの大きさの超小型衛星CubeSatsが注目されている.CubeSatsの開発は5万ドル以下で可能なため,高校生が人工衛星を軌道上に飛ばすことや,民間企業が独自のミッションを行なうことができる.民間企業,大学およびNASAが協力して開発中のEXOCUBEと呼ばれる超小型衛星は電離層の組成や特性を測定し,通信衛星などに影響を与える宇宙の天気や人工衛星を減速する抗力などのより深い理解に役立つ.また,超小型衛星NanoSail-Dはソーラーセイルが宇宙ゴミを減らすのに役立つか試験を行っている.
‐感想‐
打ち上げコストやスペースデブリ問題の観点から人工衛星が小型化するメリットは大きいと感じた.電子機器の小型化も重要なのだろうが,より幅広いミッションを実行するために推進システムの小型化も重要な課題なのだろう.100kg以下の小型衛星用推進システムとして二段燃焼式ハイブリッドロケットはこれから旬ではないだろうか.

M1小川洋人
-要約‐
過去10年間で立方体型の小さな衛星,キューブサットの重要性が増している.Scientific Solutions株式会社は大学やNASAと共に,地球の電離層を測定するキューブサット,EXOCUBEを開発している.また,NASAが開発したナノセイル-Dでは,ソーラーセイルで衛星軌道をそらす試験が行われた.キューブサットは,目的で変動するが50,000ドル以下に収まり,既存のロケットに容易にピギーバックできる.このことは,高校が衛星を軌道に打ち上げることができ,民間企業が独自のミッションを行えることを意味する. 
‐感想‐
キューブサットが,もともとの目的である若手技術者の教育用としてではなく,小型の利点を生かした実際のミッションで活躍している.これから先,もっとやれることが増え,より多くの人が利用するようになれば,このような衛星の活躍の場はもっと増えるだろう.これからどのようになっていくのか楽しみである.

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2011/11/28 Amazon.com's Jeff Bezos Relaunches Secretive Private Spaceship Website  second test fire

M2 石川直幸
-要約‐
Amazon.comの創設者ジェフ・ベゾスが設立し宇宙企業であるBlue Originが新しいウェブサイトを公開した.Blue OriginはNASAの地表と低軌道で宇宙飛行士を輸送する企業を発展させるための資金援助を受けている4つの企業のうちの一つである.7月初旬,Blue Originは5月6日のテスト飛行にて気体を浮かせることに成功したと発表したが,8月24日に行われた果敢な飛行試験が失敗し,高度45000フィートにて機体を失った.現在,Blue OriginはNew Shepard systemによるロケット推進の垂直離陸・垂直着陸機の開発に注力している.
‐感想‐
個人的には前進翼(逆デルタ翼)が気に入っている.ただ,ロケットの横風への安定性や,ロール方向の安定性を考えるに前進翼を採用することは,記事中のテスト機体の場合はそれ以上の有利な点があると思われるが,疑問である.また,ロケットを再利用式にしたいようであるが費用の問題をどうやって解決するのかが楽しみでもある.

M2寺坂昭宏
-要約‐
Amazon.comの設立者ジェフ・ベゾスの出資によって設立された民間の宇宙企業Blue Origin社は新たなウェブサイトを公開した.Blue Origin社はロケットによる弾道飛行と周回軌道への投入を可能にする垂直離着陸機の開発を重視していると述べた.同社が開発したNew Shepard systemは再使用可能で宇宙飛行士を乗せ弾道飛行を行い,3分以上の高品質な無重力環境を得ることができる.周回軌道においても弾道飛行用に開発された再使用型垂直離着陸機の技術が使われていることが計画されている. 
‐感想‐
Blue Origin社は2000年に有人宇宙飛行を目的として設立された.個人が設立した企業にも関わらず,設立からわずかな期間で垂直離着陸器を開発していることにはとても驚かされる.民間企業による開発が活発に行われると,将来は観光を目的とした宇宙飛行が一般的になる時代が訪れるのではないかと期待が持てる.

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2011/11/21 SLS J-2X Upper Stage engine enjoys successful 500 second test fire  

M1 棧敷和弥
-要約‐
11月9日,NASAのステニス宇宙センターでJ-2Xエンジンの500秒の燃焼試験が行われ,無事に成功した.この試験ではJ-2Xが最大の性能を実現するための微調整の助けとなる重要なデータが得られる.J-2XはアレスTの上段に用いるエンジンとして開発が始められており,その技術は1960年代のJ-2エンジンが基となっている.J-2XはSpace Launch System (SLS) の上段に使用される.SLSはオリオン宇宙船や貨物,実験装置等をbeyond Earth Orbit (BEO) へと運ぶことが想定されている.
‐感想‐
スペースシャトルの後継であるSLSはサターンXを上回る非常に強力なロケットである.既存の技術の流用により,開発コストを抑えるという狙いがあるが年間で30〜35億ドルのコストがかかるため,米議会でもこの計画について賛否が分かれているようだ.最終的には小惑星や火星の探査を行うというが予算が確保できるかは疑問である.

M1村上翔太

-要約‐
2011年11月9日,NASAは新たに開発中のJ-2Xエンジンの燃焼実験を成功させた.1,310 kNの推力を持つJ-2Xは,マーシャル宇宙飛行センターのSpace Launching System (SLS)プログラムに向けてPratt & Whitney Rocketdyne社で開発されており,SLSの上段での利用が見込まれている.J-2XがSLSと共に実用化されれば,多目的有人宇宙船オリオンなどを地球周回軌道外へと送ることができるようになり,新たな場所での有人探査が可能になると期待されている.
‐感想‐
J-2Xエンジンは,かつて人類を月に送ったアポロ計画に使用されたJ-2エンジンの改良型である.50年前のエンジンをベースに,火星に人類を送り込むことができる性能を持つエンジンを作ってしまうところに,この50年間での技術の進歩を感じさせる.人類が火星に降り立つ際にどのような名言を残してくれるのか楽しみである.

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 2011/11/14 Ancient Mars Water May Have Flowed Underground

M1 小川洋人
-要約‐
火星の粘土鉱床を分析した新たな研究が,太古の火星の水が地下を流れていた可能性を示した.様々なミネラルを介して流れる水が,共に混ざり合い,蒸発することによって地上の粘土は形成される.しかし,全ての粘土が地上の水の流れで出来るわけではない.火山活動で形成された玄武岩質岩の風化によってや,火山岩を通る地下水が加熱され,化学的相互作用を起こすことでも粘土は形成される.広範囲に広がる粘土鉱床が,地下が粘土形成に最適な場所であることを証明した.かつての火星の地下水の貯留層が,微生物の繁栄をもたらした可能性がある.
‐感想‐
ここ数年,火星の水,ひいては生命の可能性に関する発見が取り沙汰されている.このような大きな発見に貢献できるならば,宇宙工学に携わるものとしては冥利に尽きるだろう.しかし,宇宙に隔てられたままの研究とははなんともじれったい.私の生きているうちに,ぜひとも人類に火星の地を踏んで欲しいものだ.

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2011/10/31 Chinese Moon Probe Tackling New Deep Space Mission  

M2 野原正寛
-要約‐
中国の月探査機・嫦娥2号は今年始めに月面地図作成ミッションを終え,その後77日間かけて月から太陽-地球ラグランジュ点のL2に到達した.嫦娥2号はL2で地球の磁場や太陽嵐の観測に取り組む.そしてその後他のラグランジュ点に向かう可能性がある.L2に位置する宇宙機は太陽光を遮蔽できる環境で科学的な観測を行うことができ,またL2から少ない燃料で木星,火星および小惑星に向かうことができるため,L2への到達は中国にとって重要な意味を持つ.L2は軌道上の予備衛星や他の軌道から来た軍事衛星の停留地点としても有用である.
‐感想‐
L2における観測結果による成果よりもむしろ中国の探査機がL2に到達したという事実に大きな意味があるように感じた.中国の宇宙開発といえば有人飛行,独自の宇宙ステーションなどの地球近傍の宇宙開発がメインであり,深宇宙を航行する科学衛星には取り組んでいないと思っていたがそういうわけでもないことが意外だった.

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2011/10/24 Galileo – keeping time with atomic clocks

M2 石川直幸
-要約‐
ガリレオ衛星ナビシステムが地球上にある車の位置を提供するには,空間的な3つの位置座標と時間を合わせた4つの情報を同時に取得する必要がある.電波信号の速度が毎秒30万kmであるため,衛星と地上との正確な距離を決定するには原子時計にナノ秒の誤差精度が必要となる.正確に場所を特定するため,高精度な原子時計を積んだ計30基の人工衛星を2018年までに周回軌道に乗せる予定であり,最初の2基は2011年10月21フランス領ギアナ宇宙港より打ち上がった.ナビに完璧な機能を持たせるため衛星の他に30〜40のアンテナステーションと4つのコントロールセンタも設置する.
‐感想‐
欧州版GPSとしてESAが計画を進めているガリレオは, 14年に18基による初期稼働,16年末には30基での運用を目指しているようだ.開発の主な理由は米の事情に左右されない独自の測位システム構築のようだが,GPSが無料なのに対しガリレオは有料のようなので,わざわざ有料のサービスを利用する事業者がいるかどうかは疑問である. 

M1 村上翔太
-要約‐
欧州宇宙機関は,アメリカのGPSよりも高精度な測位を可能とするためにGalileo測位システムの実用化を目指している.測位誤差を数メートル以下に抑えるため,このシステムには最新の原子時計を搭載した30機もの衛星が用いられる.原子時計の時刻を地上にある各コントロールセンターの時刻と同期させて衛星からの信号の到達時間をナノ秒の精度で計測し,衛星と地上との正確な距離を算出して精度を高める. 計画では2011年10月20日に最初の2機の衛星を打ち上げる予定で,最終的には2018年までの実現を目指している. 
‐感想‐
日本は準天頂衛星みちびきを導入してGalileo測位システムやGPSと連携するようだ.これが実現すれば田植え機など決まった場所を動く機械を無人化できるし,今まで以上に厳密に地殻変動を捉える事が出来るようになるので地震予知にも役立つだろう.まずは10月20日の打ち上げが無事に成功したようでなによりである.

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2011/10/17 NASA Selects Technology Payloads For Reduced-Gravity Flights

M1 金井龍一郎
-要約‐
NASAは民間の再使用型準軌道往還機及び微小重力実験航空機に搭載する新技術実証ペイロードの2セット目として,申請を新たに9つ採択した.NASAは民間の再使用型準軌道輸送産業を援助するために,民間機を利用した技術実証実験の場を提供している.混相流の実験が往還機と航空機の両方に搭載され,工学的要素技術や大気観測などの実験が往還機に,生理学・医学的な実験が航空機に搭載される.使用される往還機は7社から選ばれ,2012年初頭のフライト開始を暫定的に予定している.
‐感想‐
アメリカの宇宙開発ベンチャーには有翼機や,SpaceX社のムービーが物議を醸している垂直離着陸機などそれぞれ特色があって面白い.垂直離着陸機のインパクトは大きいが,せっかくある大気を活用してはと思う.日本でもRVTが行われているが,「フライバックする観測ロケット」ならCAMUI-Wingedに軍配が上がる気がする.

M1 棧敷和弥
-要約‐
NASAはFlight Opportunity Programとして商用の再利用可能なサブオービタル機と放物線飛行を行う商用の航空機に搭載する新技術立証のためのペイロード案を募集しており,9個の提案が選ばれている.このプログラムでは高度65000 ft(約20 km)以上の高層大気での試験飛行や短時間の微小重力環境を実現する放物線飛行が提供される.NASAは商用の機体を使ってペイロードを運ぶことで再利用可能な商業サブオービタル輸送産業の発展を支援している.ペイロード案は2014年12月31日まで受け付けられる予定である.
‐感想‐
アメリカの商用のサブオービタル飛行サービスの調達は2010年から行われており,現在は複数の企業が宇宙旅行や無重力実験などの商業目的のための機体開発を行っている.欧州でもアメリカと似たようなプログラムに着手するらしい.今後,民間での開発が進むことで低コストな宇宙へのアクセスが実用化されることに期待したい.

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2011/7/29 NASA Breaks In New Facility for Capsule Tests

M2 野原正寛
-要約‐
NASAのラングレー研究所ではオリオン多目的有人宇宙船の実物大模型を用いて着水時の性能試験を行うために100万ガロンの貯水槽を使用している.地球周回軌道や他の天体から直接帰還し,パラシュートで減速したカプセルが着水時に受ける衝撃を貯水槽とカプセルを吊すガントリーで模擬する.ガントリーは垂直および水平方向の速度を付加しつつ方向を制御する.米国では3つの民間企業が有人宇宙船を開発しており,この施設ではそれらの全てを試験できる.着水予定のない有人宇宙船であってもアボート時の着水に問題ないことを証明する必要がある.
‐感想‐
ネットで着水試験の動画を見たところ,垂直落下させるのではなくオリオンがワイヤーの先に接続された,巨大な振り子のような設備を用いて30度弱位の進入角度で着水する試験だった.オリオンが着水時にひっくり返ったりする可能性が高いのではないかと感じたが,起き上がり小法師のようにうまく設計してあるのだろうと思う.

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2011/7/22 Deep-space radio system could boost satellite communication

M2 石川直幸
-要約‐
BAE Systems社の新しい深宇宙電波通信システムを使うことによって,地球以外の惑星を周回している人工衛星と地球とが従来の20倍の速さで通信を行うことができる.このシステムはアナログ‐デジタル変換と,高速デジタルフィルタによる背景ノイズ除去を行うことによって動作する.通信速度が上がることで同時に複数台の深宇宙探査機を正確に追跡できるので,追跡を行うのは協力体制にある複数の宇宙機関の内一つだけでよく,コストの削減につながるとみられる.また,惑星や衛星のより正確な質量計算や相対性理論の検証にも役立つだろう.
-感想-
通信が早くなるというのは,電波を受信してから電波に乗せられた情報を解析するまでが早くなったということのようだ.深宇宙探査機との情報のやりとりとなると,電波が発信されてから受信するまでに分単位以上の時間がかかることだろう.その場合には発信から受信までの時間より,受信した情報の解析時間の方が重要なのかもしれない.

M2 寺坂昭宏
-要約‐
BAE Systemsが提供する新しい深宇宙無線システムを使うことで,地球上と他の惑星を周回している衛星は従来のシステムに比べ最大20倍の速度で通信することが可能となった.これはアナログ−デジタル変換機やデジタルフィルターの処理速度やサンプリングレートが向上したためである.このシステムを利用することで複数の深宇宙探査機をモニタリングするコストが下がることや,正確に追跡することが可能となり,惑星や月に関して重力や質量がより厳密に計算できることや一般相対性理論の証明に役立つことが期待されている.
‐感想‐
4月15日の英語ゼミでは深宇宙から自動で効率的にデータを取得する技術が紹介されていた.今回のシステムは処理速度やサンプリングレートなどの通信機器そのものの性能を上げることで通信速度を向上させている.同じ深宇宙探査における通信技術であるが多方面から技術開発がされていると感じた.

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2011/7/15 Stardust in our backyard provides new clues to galaxy evolution

M1 村上翔太
-要約-
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のハーシャル宇宙天文台がマゼラン雲にある超新星SN1987Aの爆発後の残骸を観測したところ,予想を遥かに上回る大量の宇宙塵を生成していることが判明した.これにより超新星が太陽の質量と同程度の大量の塵を生成しうることがわかり,初期宇宙に見られる大量の塵が超新星爆発に由来する可能性が高まった.馴染み深いマゼラン雲のSN1987Aの観測結果から,ほぼ識別不可能だった遠くの超新星の細部の調査が可能になった.このことは銀河進化をより深く理解する手掛かりになると期待されている.
-感想-
意外なところから予想外の良い結果が得られることがある.これは自分も卒業研究で経験したことがある.ちなみにSN1987Aの超新星爆発により,小柴昌俊さんが世界で初めて自然発生したニュートリノの観測に成功しノーベル賞を受賞した.観測できたのは奇跡だったと言われている.広い視野を持って研究に取り組みたい.

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2011/7/8 Russia gains edge in space race as US shuttle bows out 

M1 金井龍一郎
-要約‐
シャトルの退役により,アメリカの宇宙飛行士はISS搭乗の手段をロシアに頼る他なくなる.これから先,米政府は多額の輸送費をロシアに支払うことになるだろう.しかしロシアの宇宙開発を巡る経済状況は芳しくない.ロシア連邦宇宙局の新長官は,宇宙産業市場におけるロシアの存在をより強め,売上ベースで正当な市場占有率を得ることを望んでいる.ISS往還用ソユーズの生産が重荷となる中で,中国という新たな競合相手も生まれている.冷戦時代に活躍した関係者は,協調路線を進む一方で予算の減っていく自国に対し嘆いている. 
‐感想‐
冷戦終結後の宇宙開発は競争から協調へと変わって行ったが,必ずしも良い事ばかりだったとは思えない.それがもうすぐ訪れるアメリカの有人宇宙機の空白期間であり,本記事におけるロシア連邦宇宙局財政難である.国同士の競争は冷戦によって否定されたので,やはり民間企業による市場競争が宇宙産業発展をもたらすのかもしれない.

M1 棧敷和弥
-要約-
スペースシャトルの退役に伴い,ロシアはISSへ有人のアクセスを支配することになる.アメリカは民間の新たな有人宇宙機が建造されるまでの間,ISSへアクセスをロシアに頼らねばならず,米国政府はロシアの宇宙機ソユーズへの乗車賃を支払い続けなければならない.ソユーズは帰還船を除いて使い捨てとなっており,ロシア連邦宇宙局の生産能力には重い負担がかかることになる.ロシア連邦宇宙局は今年の予算を30億ドルと公表しており,衛星打ち上げの失敗などで生じたコストの埋め合わせのため,宇宙市場で強い立場を得ることを望んでいる. 
-感想-
2004年にスペースシャトル計画の終了が発表されてから,ロシア連邦宇当局は米国の宇宙飛行士を運搬する費用を値上げしてきた.最近の記事を見るとソユーズで宇宙飛行士をISSに送るためには一回の飛行で6300万ドルを支払わなければならないらしい.ISSへの安価なアクセスのため,新たな宇宙機の開発が進むことに期待したい.

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2011/7/1 Discovery Adds Mystery to Earth's Genesis

M2 野原正寛
-要約‐
地球や他の岩石状惑星は太陽系の初期の構成物質から形成されたものでないことが明らかになった.科学者たちは,NASAの探査機Genesisを用いて宇宙空間で採取した,太陽風の粒子の調査を行った.Genesisのカプセルは地球に墜落したが,一部のサンプルは無事回収された.粒子の調査により,酸素と窒素それぞれの同位体の比率が地球と太陽風の粒子サンプルで異なることが分かった.この結果は,太陽が形成された後,後に地球を形成する粒子に変化が起こったことを示しており,これは太陽からの紫外線が原因である可能性が高い.
‐感想‐
今まで得られたサンプルがなぜ太陽系形成の過程の解明につながるのか謎だったが,今回理解することができよかった.また,太陽系形成の研究のためには,物理,化学,地学,生物などの幅広い知識を持ち,広い視野で事象を観察することが大切だと感じた.自分も様々な側面から物事を見て判断できるような人間になりたいと思う.

M1 小川洋人
-要約-
宇宙探査機ジェネシスの帰還カプセルより採取された太陽風の粒子のサンプルが,太陽系内の岩石状の天体と太陽の基礎構成成分が大きく異なっていることを明らかにした.Kevin McKeeganとBernard Martyが 率いる2研究チームがそれぞれサンプルの酸素と窒素の同位体構成を解析したところ,太陽と地球とで同位体存在比が異なることがわかった.両者はこの違いの起こるメカニズムの有力な説として同位体自己遮蔽をあげているが,確証は得られていない.両者の研究は6月23日刊行のサイエンス誌に掲載されている. 
-感想-
ジェネシスが帰還カプセルを地球に送った際,カプセルのパラシュートが開かず不時着し,サンプルの一部を失ったとある.これは開傘のためのセンサを逆に取り付けたことが原因であるらしい.人為的なミスで全てが水泡に帰す恐ろしさもさることながら,そのミスを調べることの重要性を改めて認識させられた.   

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2011/6/17 NASA is Making Hot, Way Cool 

M2 石川直幸
-要約‐
NASAゴダード宇宙飛行センターの熱工学者Jeffrey Didionとイリノイ工科大学教授Jamal Seyed-Yagoobiは手を組み,電子機器における熱制御の現在の限界を克服できる技術を開発している.2人はアメリカ空軍及び国立再生可能エネルギー研究所との技術協力を行いながら,電気流体力学(EHD)を基礎にした熱制御技術を開発している.EHDによる熱制御では簡素かつより効果的に小さい空間から熱を取り除くことができる.試作品のポンプがロケット打ち上げ時の激しい荷重に耐えられることを実証することが開発の大きな節目となるだろう.
‐感想‐
今回試作されたポンプには可動部がなく,電場で冷却材をくみ出すようだ.電子機器の排熱をより多く捨てられるようになればより多くのことができるようになるようなので,今後の進展に期待したい.ただ,排熱を多くするとラジエータも大きくしなければならなくなるであろうから,ラジエータに関する技術開発にも注目したい.

M2 寺坂昭宏
-要約-
NASAの科学者は宇宙機器や部品から熱をより効率的に取り除くプロトタイプのポンプを開発した.このポンプは電気流体力学をベースとし,電界を利用して冷却剤を冷却板の中の小さいダクトを通して汲み上げる.効率的に熱を取り除きラジエーターに輸送することが出来る.NASA Goddard宇宙飛行センター熱技術者のJeffery Didionは「このシステムは稼動部品が必要なく、軽量で消費電力が約0.5 wと少ない.さらに重要なことは異なった様々なサイズにも適用することが出来る点である.」と述べている.
-感想-
電気流体力学現象とは絶縁性流体に電圧を印加することで電場の方向に沿って流れが生じる現象である.記事では宇宙空間での熱輸送に応用する試みが紹介されていたが,他にも滑らかな流体の駆動を活かしたアクチュエータ駆動用のポンプとしても応用が期待されている.少消費電力や軽量などの利点を活かした更なる応用例にも注目したい.  

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2011/5/13 Growing Up at Goddard: Shuttle Small Payloads Launched Careers of Many 

M1 棧敷和弥
-要約-
スペースシャトルの1回の飛行には数億ドルの費用がかかる.そのためNASAはShuttle Small Payload Project (SSPP) によって余ったペイロード容量を活用していた.SSPPではペイロード容量の空きを小型のモジュール実験,技術試験ユニットにより,有効に利用することができる.1982年から2003年の間,SSPPは貴重な宇宙実験場を提供し,若手の科学者や技術者たちはプロジェクトの中で短期間に多くの経験を積んだ.SSPPはNASAにとって経済的,技術的に最も成功したプロジェクトの一つとなった.
-感想-
SSPPはシャトルのペイロード容量を満たすだけでなく,宇宙空間での比較的安価な実験場を提供するという優れた考えに思える.シャトルの退役を控え,ゴダードの技術者やマネージャーたちは安価な宇宙へのアクセスの確保に取り組んでいるそうだが,一度優れたものが出来た後に全く新しいもの作り出すというのはなかなか難しそうだ.

M1 村上翔太
-要約-
スペースシャトルのペイロードの容量を最大限に活用するために,1982年〜2003年にかけてNASAはSSPP (Shuttle Small Payloads Project) と呼ばれるプロジェクトを実行した.SSPPによって提供された貴重な実験の場を利用して研究を進めた若い科学者たちや技術者たちの多くは短期間でたくさんの経験を得ることができたので,今でもNASAの技術開発の中心となって活躍している.SSPPはNASAの技術開発史上,経済的にも技術的にも最も成功を収めたプロジェクトの一つとなった. 
-感想-
コスト削減のためには何か新しい技術を開発すべきだと考えがちであるが,一方で既存の技術をもって如何に無駄を省けるのかということも考慮すべきである.それを大いに示してくれる内容であった.確かにどちらの方法も新しい発想が必要であることに変わりはないので,どちらの方法に対しても同じくらい注力すべきであろう. 

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2011/4/22 Long Shot: NASA Contractor Could Keep Flying Space Shuttles

M1 小川洋人
-要約-
United Space Alliance(USA)は,スペースシャトル「エンデバー」と「アトランティス」の年二回の商業飛行を目指すという大胆な試みを計画している.USAのこの計画は,シャトル引退後,新たに商用の宇宙船が運用されるまでのアメリカ製宇宙機の空白期間を埋める対策の一環である.またこの計画では,投資家や顧客を募ることでシャトルの運営や打ち上げのコストの削減が可能であるとしている.しかし,NASAは4月12日に引退後のシャトルの展示先を発表しており,USAの熱意に反して計画の見通しは立っていない.
-感想-
展示先が発表された上でのスペースシャトルの商用利用の計画ということで,本文を読む限りでは一考の余地はあるのではと感じたが,やはりコスト面が問題なのだろうか.原文の記事に対するコメントの中に,お金や政治の話が見られたが,お金のかかる事業というのはどこの国でも顰蹙を買うのだな,とアメリカが少し身近に感じた.

M1 金井龍一郎
-要約-
NASAはスペースシャトルの退役を詳細に渡り計画しているが,NASAの主契約業者であるUnited Space Alliance社(USA)はオービターをその後も商業利用する計画を立てている.スペースシャトルの打ち上げ計画が終了してから地球低軌道に人を運べる新たに商業機が実現するまでの間,NASAの宇宙飛行士はISSへの搭乗をロシアの宇宙機に頼る必要がある.USAの計画にはこうしたアメリカ産宇宙機の空白期間を埋める意図もある.しかしUSAの熱意をもってしても,この「大博打」は進展していないのが現状である.
-感想-
幼少期からスペースシャトルの打ち上げを見てきた自分としては,シャトルの退役には寂しさを感じる.しかしスペースシャトルはコスト的にも安全設計的にも問題点が山積しており,だからこそ退役という選択がなされたはずである.今必要なのはスペースシャトルにしがみつくことではなく,設計思想の異なる次世代機の開発だろうと思う.

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2011/4/15 NASA's MESSENGER Enters Orbit about Mercury and Sends Data to Earth Using CCSDS File Delivery Protocol Developed for Deep Space by International Team

M2 石川直幸
-要約-
3月18日 ,NASAは探査機MESSENGERを水星周回軌道へ投入することに成功した.MESSENGERチームはCCSDS File Delivery Protocol (CFDP)を用いて情報の取得を行っている.CFDPは情報通信遅れや,深宇宙でしばしば起こる長い接続不良があっても確実に役割を果たすように設計された情報フォーマットであり,また,CFDPに組み込まれたデータの管理と通信計画機能によって宇宙飛行と地上のソフトウェアを簡素なものにすることができ,コストの面でも宇宙飛行ミッションに有用である.今回の成功によって,深宇宙科学や宇宙探査を支援できる惑星間の自動通信構造の構築に近づいたと関係者は語った.
-感想-
私は情報関係には疎いので情報フォーマットを作ることのすごさはわからない.しかし,コストダウンなどの,目に見える形で結果を出している.探査機に限らず,ほとんどのものは数多くの種類の知識や技術の結晶であろうから,あらゆるものにはいろいろな方面に発展の可能性が秘められていることだろう.

M2 寺坂昭宏
-要約-
3月18日 にNASAは探査機MESSENGERを水星周回軌道への投入に成功した.MESSENGERは7個の計測器で水星のデータを集め,地球に送信する.プロジェクトチームは宇宙用通信における課題を解決するために設計された高性能専用プロトコルCFDP (CCSDS File Delivery Protocol) を用いデータを取得している.CFDPはデータ損失を最小化し,失われたデータは自動で再送信しデータの送信時に起こる遅延や深宇宙探査で頻発する長い通信の中断が起きても確実に機能するように設計されている.
-感想-
水星は太陽に近く膨大な熱を受けることや探査を行うためには急激に速度を落とさなければならないなどの理由から太陽系で最も探査が遅れている惑星の一つとされている.地球から水星までの最短距離は約1億kmだがMESSENGERは6回のフライバイを繰り返し,79億km者距離を移動していることからも水星探査の難しさを感じた.

M2 野原正寛
-要約-
NASAの水星探査機MESSENGERのチームは極めて特殊な通信規約であるCCSDS File Delivery Protocol (CFDP) を使用している.CFDPは,深宇宙の厳しい環境や水星の近くのような過酷な環境におかれた宇宙機からでも,確実で効率的にファイルをダウンロードするために開発された.CFDPは強力な誤信号訂正コーディングの使用,および損失したデータを自動的に発見し再送信を要求するモードに対応しているため,管制官はファイル管理よりもサブシステムや装置の調子の監視に専念することが可能である.
-感想-
ほぼ無視できる遅延および低エラー率を前提としたインターネットなどのプロトコルとは異なり,惑星間の距離における通信においては大幅な遅延および高いエラー率に耐性のあるプロトコルが必要のようだ.「はやぶさ」との通信には片道15分かかることもあったと聞くがあるが,改めて深宇宙探査機の運用の大変さを感じた.

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2011/1/31 NASA's First Solar Sail NanoSail-D Deploys in Low-Earth Orbit

M1野原正寛
-要約-
NASAのエンジニアはナノサットNanoSail-Dが地球低軌道で約10 uのポリマー製の帆を展開し,計画通り動作していることを確認した.NanoSail-Dは小型太陽帆の展開技術を実証するために設計された.帆の展開はNanoSail-Dから受信したビーコンの信号で確認され,さらに衛星の軌道パラメータも帆の展開と整合性のある適切な変化を示している.NanoSail-Dは搭載バッテリーを使い果たすまで信号を発信し続け,大気の状態によるが70から120日間,地球低軌道に留まるだろうと考えられている.
-感想-
NanoSail-Dは,正方形の帆を展開するために,帆の角が結ばれた4本のアームを伸ばすようだ.一方,IKAROSはスピンによって発生する遠心力を利用して帆を展開したらしい.この場合膜を支える構造物がないため軽量のようだ.太陽帆の分野では日本が先行していると思うので追い抜かれることなく頑張って欲しい.

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2011/1/17 NASA Research Team Reveals Moon Has Earth-Like Core

M2 田村 正佳
-要約-
NASAの研究チームは,アポロ時代に得られた月面の地震データを最新の地震学技術を用いて解析し,月は地球と似た核の構造を持っていることを示唆した.研究者たちは,1969年から1977年の間に蓄積された膨大な月面上の地震計データから,デジタル処理でノイズを取り除き,地震波が月内部のどこでどのようにして通過,あるいは反射してきたのかを調べた.その結果,月の中心部から約240 kmまでは鉄を多く含む固体の核,以降約330 kmまでは液体の鉄の核,以降約480 kmまでは部分溶解した鉄の層であると推定した.
-感想-
月に探査機を送り込むことなく,40年以上も前に得られたデータを解析して新たな発見に漕ぎ着いたのは驚きだ.そのときは使い道がないと思われたデータでも,解析技術の進歩と共にいつかは役に立つこともあるということを学んだ.実験で得られたどんな些細なデータでも,すぐに参照できるようにしなければならないと反省した.

M2 萩原 俊輔
-要約-
アポロ計画時代に取得された地震波データに最先端の地震学の技法を適用したところ,月は地球と似た核を持つことが示唆された.NASAのWeber氏が率いる研究チームの解析結果は,月には鉄を多く含む半径240 kmの固体の内核と,主に液体の鉄から成る半径330 kmの外核が存在することを示唆している.地球の核と異なる点は,月の外核の周辺には部分的に溶融した層があることだ.Weber氏は,アポロ計画で得たデータの解析を続けて月の核と地震波の性質を精密に評価し,将来の月探査ミッションで得られるデータの解析時に役立てたい,と述べた.
-感想-
アポロ計画で月の表面に地震計が設置されてから,1977年まで地震波の観測が行われていた.それによるとマグニチュード5レベルの揺れが10分程続く地震がたびたび観測されたらしい.月に基地を作るならよほど頑丈な建物を作らなければならないだろう.その際には地震大国日本の誇る耐震技術を活かしてもらいたい.
 
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2010/12/20 Japan Advances University-led Microsatellite Constellation

M2 榎本 剛矩
-要約-
日本政府の資金援助受けた大学連合が超小型衛星網の実現に向けてアジアの国々に協力を呼びかけている.The University International Formation Mission (UNIFORM) 計画は安価な超小型衛星群と地上基地局のネットワークを利用して有用なデータの収集を行うことを目的として11月に公式発表された.この計画は日本の超小型衛星開発の促進,アジアの若手技術者の育成の他にアジア太平洋地域の国際関係の強化に繋がることが期待されている.UNIFORMは2012年と2014年にいくつかの50 kg級衛星のグループを打ち上げ,地球観測が可能な観測網の構築を目指している.
-感想-
今まで個々の大学がそれぞれの目的で研究,開発を行ってきた感がする小型衛星開発であるが,この計画は,国際的な小型衛星製作の共通の基盤を作ることで小型衛星技術を確実なものにし,実用的な手段とするものらしい.技術として信頼性が確保されれば,それを利用するために打ち上げ施設などのインフラの整備も進むだろう.

M2 竹腰 卓博
-要約-
日本の文部科学省から援助を得て設立された大学コンソーシアム(UNIFORM)は,日本以外のアジアの国々にも参加の呼びかけを行っている.UNIFORMは,衛星コンステレーションによる地球観測や大気観測を行うために,複数の小型人工衛星の製造を行うことを目的としている.同団体は2012年と2014年のそれぞれの年に,複数機の50 kg級衛星を一度に打ち上げることを計画している.関係者は,UNIFORMに参加するアジア太平洋の国家が日本と協力して衛星設備の標準化を進めることを期待している.
-感想-
UNIFORMは小型人工衛星技術の国際標準化を行うことを目標としているそうだ.小型衛星という新興の分野でフォーマットをつくるということは難しそうだが楽しそうでもある.しかし,新興国と手を組むとなると,うっかり大事な技術が流出するのではないかと多少不安に思う.国からもお金が出るそうなので頑張って欲しい.
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2010/12/13 US military's mysterious X-37B space plane comes back to Earth with autonomous landing

M2 萩原 俊輔
-要約-
アメリカ軍の極秘無人宇宙往還機X-37Bは,7カ月に及んだ初飛行を成功裏に終え,大気圏に再突入した後,バンデンバーグ空軍基地に着陸した.空軍は今回の試験の目的はX-37B自体のテストだと強調しているが,小型ペイロードベイ内にスパイシステムを搭載していたのでは,との憶測が飛び交っている.空軍次官のPayton氏は,このプロジェクトが宇宙空間の軍事利用のさきがけと特徴付けられることを拒否した.本プロジェクトの目的は,安価で着陸から再離陸までに要する時間の短い宇宙往還機の実証であり,X-78Bは10日程度の間隔で小型衛星を迅速に軌道投入するのに役立つだろう,とPayton氏は語っている.
-感想-
X-37Bは将来の用途が明らかでなく,宇宙空間の軍事利用が拡大する懸念があると一部では批判されていたようだ.軍事利用の真偽はともかく,好きな時・好きな軌道に安価で打ち上げられる小型往還機が開発できれば,撃墜される恐れのない優秀な偵察機になりそうだ.

M1 野原 正寛
-要約-
米軍の無人宇宙往還機X-37Bは,軌道から離脱し,7ヶ月以上にもわたる初飛行を終えてバンデンバーグ空軍基地に着陸した.空軍は今回のフライトの主な目的は軌道上で機体を試験することであり,全ての目的が達成されたと発表した.X-37Bは重量5 ton,全長8.8 m,また,翼幅4.6 m未満であり,Atlas Vによって今年4月に打ち上げられた.X-37Bは小型人工衛星を10から15日間隔に迅速に軌道投入するために有用であると空軍の次官は語っている.X-37Bの2度目の打ち上げは来年の春に予定されている.
-感想-
X-37Bは直径5 mもあるAtlas Vのフェアリング内に収納されて,一般の人工衛星と同様の方法で軌道投入されたらしい.翼があるものをフェアリング内に収納して打ち上げるという考え方に新鮮さを感じた.より打ち上げ能力が高いH-UBもHTVだけではなく様々なペイロードの打ち上げに使われて行けばよいと思う.
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2010/12/6 Mission Proposed to Send Astronauts to the Moon's Far Side

M1 寺坂 昭宏
-要約-
Lockheed Martin社は開発中のOrion宇宙船を使う地球‐月系L2ラグランジュ点裏面でのミッションを計画している.地球‐月系L2ラグランジュ点とは地球と月の重力が重なり合い宇宙船が1つの場所にとどまり,地球周りの軌道を月と共に同期することを可能にする所である.乗組員はL2ラグランジュ点に留まり,月面での様々な任務を行うロボットを操作する.Lockheed Martin社はこの計画により小惑星探査に必要な技術を向上させることができ,遠隔操作による火星探査の有効な見本になると述べている.
-感想-
ソ連が1959年に宇宙探査機ルナ2号を打ち上げ月に衝突させ始まった月探査は,1970年代にアメリカがアポロ計画を,ソ連がルナ計画を終了させて以来,近年まで盛んには行われてこなかった.現在,アメリカの他に中国,インド,日本,ロシア,ドイツが月探査の計画を発表している.各国の月探査の結果に注目していきたい.

M1 石川 直幸
-要約-
NASAが正式に,月面に人を再び送り込む計画を中止した一方,月より遠くにあるラグランジュポイントL2に宇宙飛行士を送り込む計画が提案されていた.この計画には宇宙機をL2の周りのヘイロー軌道へと投入し,軌道上から遠隔操作で無人月面車を動かすなどのミッションが含まれており,将来の火星有人探査や全ミッション期間が数カ月に及ぶ計画への試験飛行という性格がある.Lockheed Martin社で開発中のOrionカプセルが生命維持システムとして提案されており,月面車では月の裏側での電波望遠鏡の設置や,月南極のAitken盆地での岩石標本採集などのミッションを行う.
-感想-
この計画では月面への有人着陸はないようだが,アポロの乗組員より1.15倍地球から遠くへと旅することになる今回の乗組員は人類史上もっとも地球から離れた者となるだろう.オバマ大統領は,2030年代半ばまでに有人火星探査を目指すと発表したが,ブッシュ元大統領が発表した計画のように中止されないことを祈るばかりである.
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2010/11/29 KLM Announces Suborbital Flight Relationship with Space Experience Curacao

M2 田村 正佳
-要約-
KLMオランダ航空は,民間打上げ施設とキュラソー島からの弾道飛行サービスの提供を目的に設立されたSpace Experience Curacao (SXC) 社と提携したと発表した.KLMオランダ航空は将来,弾道飛行,マイレージサービス,キュラソー島への休暇パッケージを一貫してサポートする予定である.使用機体は2人乗り,液体ロケット推進,高度100 kmまで上昇可能,完全再利用型というスペックのXCOR社のLynxである.SXC社はXCOR社と既にLynxのリース契約を行っており,SXC社とKLMオランダ航空は2014年1月に初の商用飛行を行う予定である.
-感想-
飛行するLynxのCG動画をウェブサイトで見つけた.2人乗りというだけあって,大きさはセスナ機並である.一見頼りなさそうな小型の機体が立派に宇宙に行ってしまう様子は格好良かった.このツアーの料金は800万円弱だそうだ.地球周回ツアーが22億円であることを考えると,お手頃な宇宙旅行として流行りそうだ.

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2010/11/22 STS-133:Final Flight of Discovery

M1 野原 正寛
-要約-
これまで宇宙で計352日間に渡って全ての任務を実行してきたDiscoveryは,STS-133のミッション終了後,全てのshuttleの中で最初に引退する.ハッブル宇宙望遠鏡などの人工衛星の軌道投入や日本実験棟きぼうのISSへの運搬はDiscoveryによって行われた.今回,DiscoveryはRobonaut 2などを格納した恒久型多目的モジュールをISSに運搬する.恒久型多目的モジュールは多目的モジュールLeonardoをISSに恒久的に設置できるように改造したもので,保管庫として使用される.
-感想-
有翼往還機というコンセプトに対してネガティブな評価を下されることもあるSpace shuttleであるが,宇宙開発における功績は多大であり,一時代を築いた機体だったと改めて感じた.Discoveryの打ち上げは12月3日以降に延期するとNASAから発表された.最後のフライトも無事完了させてほしいと思う.

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2010/11/15 Tank leak delays Discovery launch until end November

M1 石川 直幸
-要約-
NASAはスペースシャトルディスカバリーの5度目の打ち上げ延期を発表した.外部燃料タンクに液体水素の充填を始めてから約2時間後,ガス化した水素を排出するパイプと外部燃料タンクの結合部から水素が漏れているのが発見された.さらに,打ち上げ予定時刻の数時間前に長さ18cmの亀裂が外部燃料タンクに見つかった.次の打ち上げは早くとも11月30日であるが,12月にずれこむ可能性もある.ディスカバリーは39回目となる次回の打ち上げでLeonardと呼ばれる倉庫モジュールや,人型ロボットのRobonaut2などを国際宇宙ステーションに輸送し,退役する予定である.
-感想-
少し毛色が違うが,チャレンジャー号やコロンビア号のような大事に至らなかったことはけっこうなことだと思った.また,アメリカではSFチックな技術の開発も目まぐるしいようで,米軍では外骨格パワードスーツを試験していたり,無人の軍用車が自動で荷物を運ぶ試験をしていたり.金の突っ込み具合が違うなと思った.

M1 寺坂 昭宏
-要約-
NASAは水素漏れのためにDiscoveryの打ち上げを11月30日まで延期すると発表した.スペースシャトルは来年で全て退役することになっており,その中でも39度目の打ち上げを迎えるDiscoveryは今回が最後の打ち上げとなる.この打ち上げはLeonardと呼ばれる補給モジュールを宇宙ステーションに運ぶことを目的としている.NASAは最終的なスペースシャトルの打ち上げを2011年2月27日に計画しているが,資金調達が可能であれば2011年6月にさらに打ち上げが行われる可能性がある.
-感想-
スペースシャトルは1981年に宇宙空間への初飛行をして以来,5機で132回の飛行が行われ,30年近く宇宙開発に貢献してきた.老朽化が進んでいることや繰り返し使用するためには巨額なメンテナンス費用が必要なためとはいえ,自分が宇宙に興味を持つきっかけとなったスペースシャトルの退役は少し残念に思う.

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2010/11/8 Space Fence Design Moves Into Next Phase

M2 萩原俊輔
-要約-
Electronic Systems Center はスペースフェンスプログラム次段階の提案書の公募を始めた.スペースフェンスとは複数のSバンド周波数帯のレーダーを地上に分散配置するシステムで,地球低軌道に漂う物体を検出し追跡する.次段階でESCは予備設計審査の契約を2件結ぶ予定である.選出された契約業者は18カ月で予備システム設計,レーダーの性能解析,価格見積もり及び試作製作を行う.プログラムマネージャであるHaines氏は,スペースフェンスによって宇宙機の衝突事故の危険性を減らし,また,より正確な宇宙空間漂流物のカタログを作ることができると語っている.
-感想-
直径10 cm以上のデブリはカタログ登録され常時監視されている.それにもかかわらず,2009年にはイリジウム社の衛星とロシアの衛星が衝突事故を起こしている.イリジウム社は毎週送られてくるデブリ異常接近報告があまりに多すぎて対応しきれなかったと述べている.検出されるデブリの数が増えたら余計混乱しそうだ.

M2 田村正佳
-要約-
アメリカのElectronic Systems Center (ESC) は,スペースデブリ等を監視するSpace Fence 計画が新たな局面に入ったとアナウンスした.Space Fence はSバンドレーダーを地上に分散させて配置する計画で,1961年から稼働しているVHF Fenceに置き換わるものである.レーダーに高周波を利用することにより,地球低軌道に存在するマイクロ衛星やデブリをより正確に検知,追跡することができる.ESCは上限2社までと合計2億1400万ドルの契約を結び,契約者は18ヶ月の間に基本設計や技術的課題に取り組むことが期待されている.
-感想-
ISSに10 cm前後のデブリが接近し,作業員が避難するというニュースを聞いたことがある.この程度の大きさのデブリでさえ,ISSを完全に破壊するには十分だという.Space Fenceなどで宇宙活動の安全性を向上させようとしている中,数年前に衛星の破壊実験を行い,デブリを増やした中国の行動は不可解である.

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2010/11/1 Rocket scientist aims to relaunch propulsion technology

M2 竹腰卓博
-要約-
ロケットの推進方式として,従来の化学式と異なる,マイクロ波を利用した新しい方式が考案されている.新しい方式では,ロケット機体へ地上からマイクロ波を照射することでエネルギを伝達する.伝達されたエネルギは,機体に搭載された水素を2000 K以上の温度に加熱するために用いられ,加熱された水素をノズルから排出することで推力が得られる.マイクロ波を利用して水素を必要な温度まで加熱することは既存の技術でも可能であり,カリフォルニア工科大学の学生は7年程度でシステム全体の設備を試験的に整え,打ち上げを行うことを目標としている.
-感想-
外燃機関のお化けのような印象を受けたが,基本的な考えはソーラーカーを発展させたものであろうかと思った.マイクロ波を用いると,機体に搭載するエネルギを発生させる機構を大幅に削減することができるので非常に魅力的であると思う.しかし,移動物体を追跡しながらマイクロ波を照射していては,鳥が丸焼けになりそうだ.

M2 榎本剛矩
-要約-
研究グループは従来の化学ロケット推進システムを捨て,マイクロ波による推進システムに移行する時が来たと述べた.この方式では熱交換器を基にしたエンジン内で地上基地から送信されたマイクロ波を熱として変換した後,搭載した水素の間で熱交換を行い推力を得る.専門家によると従来の方式に比べ2.5倍の推力を得ることができる。単位推進剤当りの高出力化によりペイロードの増加,機体構造の強化のための重量増加が可能であるため航空機のような再使用可能な機体となることが予想されている.マイクロ波による推進システムは1920年代に提唱されていたが,十分な出力のビームが得られず実現に至らなかった.
-感想-
本文中にこの技術は個人利用に向けて注目されていたと言う表現から.先日,アメリカの商用宇宙港が2011年の完成を予定しているという記事を思い出した,研究テーマにもスペースポートに関わるものがあり,宇宙が国家や研究機関だけのものでなく,個人の旅行先にもなる時代が現実のものになろうとしていることを感じた.

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2010/10/25 Soyuz launcher ready to restore full Globalstar service

M1 寺坂昭宏
-要約-
Globalstar社のモバイル通信ネットワークのために6つの次世代人工衛星がSoyuzでカザフスタンから打ち上げられる.この打ち上げは双方向の音声,データサービス網を再構築し,2025年を越えて運用するために行われる.同社は2011年終了までに24機の衛星を打ち上げ終わる計画であり,すでに2007年に打ち上げられた8機の衛星とあわせて32機の衛星配置を得ることになる.この衛星はThales Alenia Space社によって製作され,従来の2倍の設計仕様である15年間の運用が可能なように設計されている.
-感想-
現在Globalstar社が運営する衛星通信システムで世界の80パーセント以上の範囲で使用できる衛星携帯電話や衛星通信サービスを提供している.携帯電話ネットワーク外の海上などの場所でメリットがあるのだろうが,衛星の寿命のたびに新たな衛星を打ち上げなければならず,通信衛星の運用の難しさを感じた.

M1 野原正寛
-要約-
Globalstarのモバイル通信ネットワークのための次世代通信衛星6基がソユーズロケットでカザフスタンから打ち上げられる.現在,Globalstarの双方向音声データサービスはアンテナに関連する問題に見舞われているため,地上における送受信範囲が制限されている.新しい通信衛星は既存の2倍にあたる15年間運用できるように設計されており,これにより双方向音声データサービスが復旧し,運用期間を2025年まで延長できる.今後同型衛星の打ち上げが3回予定されており,計24基が打ち上げられる予定である.
-感想-
今回使われたソユーズ2-1aロケットは自分が見たことがあるソユーズロケットよりもフェアリング部が太くなっているように見えた.これはデジタル化されたシステムを搭載して,機体の軽量化に成功した結果によるペイロードの増加の影響らしい.数十年前から打ち上げられてきた機体が現在でも改良され続けていることに驚いた.

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2010/10/18 NASA's WISE Mission Warms Up but Keeps Chugging Along

★MVP M2 萩原俊輔
-要約-
赤外線による掃天観測ミッションを終えたNASAのWISE(Wide-field Infrared Survey Explorer)は当初の予定通り,搭載冷却材を使い果たした.これによってWISEは‘暖まっている’がNASAはミッションの延長を決定した.2009年12月に極軌道に打ち上げられたWISEは,口径40 cmの赤外線望遠鏡を用いて180万枚以上の画像を撮影した.これまでに1.5回の掃天観測が完了しており,地球近傍の天体,褐色矮星および赤外線銀河の目録の作成が行われている.WISEのミッションは1−4カ月延長される予定であり,太陽系観測および掃天観測の追加調査が計画されている.
-感想-
 WISEはこれまでに33,500個以上の惑星を発見したようだ.本文に地球近傍の惑星から遠く離れた赤外線銀河までをカバーする天体カタログを作っていると書いてあったが,カタログというからには惑星の名前と特徴ぐらいは記さなくてはならないだろう.33,500以上…名前を付けるだけでも気が遠くなりそうである.

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2010/7/12 NASA Preparing For DM-2 Test : Now Thst's Powerful Information

M2 榎本剛矩
-要約-
NASAは,次世代の5分割固体ロケットDM-2の試験の準備をしている.DM-2はATK Space Systemsにより開発され,360万ポンドの推力を発生する.今回の試験は2度目のフルスケール試験であり,昨年秋のDM-1の試験の成功に続くものである.DM-2にはスペースシャトルの固体ロケットブースターに比べて様々な改良が加えられ,性能の向上とともに安全性,信頼性の向上も望まれている.テスト用モーターの試験は強度,新素材の評価,新たな設計部分の欠点の発見,製造過程の確認を行う良い機会とされている.このようなテストは,新たな有人宇宙飛行技術の開発を行うと同時に,アメリカの開発能力を維持する技術改善の場として利用される.
-感想-
5分割のロケットというものを初めて知った.性能面で優位な部分があってのことであると思うが,整備性や運搬する上での利点もあるのだろうか.5分割することでどのような効果があるのか知りたいところである.次世代技術の試験の場においても国家としての技術レベルの維持や継続性について考えられている部分に日本との違いを感じた.

M1 野原正寛
-要約-
NASA の次世代固体ロケットモーターであるDM-2の燃焼試験の準備が進行中である.5つのセグメントで構成され,360万ポンドの推力をもつDM-2はAresTの初段として ATK Space Systems によって開発された.今回の燃焼試験はフルスケール、定格の燃焼時間で行う2度目の試験である.1度目の燃焼試験は大気温度下で行われたが,今回の燃焼試験は,低い気温におけるモーターの性能を確認するために,DM-2 全体の温度を華氏40度に下げて行われる.得られた測定結果はノズルの修正や断熱材の改良に使われる.
-感想-
今年の初めに発表されたコンステレーション計画の中止により,Aresの開発は中断しているのだろうと思っていたが,開発は着実に進んでいるようで安心した.計画の遅延や開発予算の超過が発生しているようだが,昨年行われたAresTの試験機の打ち上げは成功しているので,今回の燃焼試験もぜひ成功してほしいと思う.

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2010/7/5 New Boeing Spaceship Targets Commercial Missions

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2010/6/26 Largest Commercial Rocket Launch Deal Ever Signed by SpaceX

M2 萩原俊輔
-要約-
SpaceX社は4.92億ドルという単体の衛星打上事業としては最大の契約をIridium社と結んだ.SpaceX社は同社のFalcon9を使ってIridium NEXTと呼ばれる通信衛星群を2015年から2017年にかけて打ち上げる予定である.Falcon9は6月4日に最初の打上テストが実施され,これに成功したことで軌道ロケットとしての有効性が証明された.また,SpaceX社はDragon無人宇宙船を用いてISSへ物資補給を行う16億ドルの契約をNASAと結んでいる.シャトル退役後に地球低軌道およびISSへの人員輸送を担う民間企業が求められており,SpaceX社は競合2社のうちの一つである.
-感想-
ドラゴン宇宙船は貨物用と乗員用の2種類が開発されており,乗員用は7人乗りである.Falcon9の打上費用の目標は30億円らしいので,人数で割れば一人約4.3億円でISSへ行ける.ソユーズに乗ってISSを訪問したTito氏がロシアに対して支払った24億円と比べるとずいぶんお得ではあるが,一般人にとって宇宙はまだまだ遠いようだ.

M2 田村正佳
-要約-
カリフォルニア州ホーソンに本拠地を置くSpaceX社は,Falcon 9初号機打ち上げ成功直後に,Iridium Communications社と4億9200万ドルの契約を交わした.これは,Iridium NEXT と呼ばれる通信衛星群の打ち上げを行う契約であり,民間企業による単一の打ち上げ事業としては最高額である.更にPaceX社はNASAや台湾とも大口の契約を交わしている.PaceX社のCEO,Elon Musk 氏は自社について,革新的で低コストなアプローチを行うという意味で,伝統的な航空宇宙企業というよりはIntelのようなシリコンバレーの技術系企業に似た存在であると述べた.
-感想-
インターネットベンチャー企業PayPalの創始者が設立したSpaceX社であるが,エンジンまでも新規に自社開発している.同社の資金力には驚かされるが,H2A202と同程度の軌道投入能力を持ったFalcon 9が,打ち上げ費用面では1/3程度であり,製品のコストパフォーマンスにも驚かされる.航空宇宙産業界の新しい時代の幕開けを感じさせる.

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2010/6/14 Hatch closed: 18-month Mars500 mission has begun

★MVP M1 野原正寛 
-要約-
 有人火星探査の一連の流れを模擬するMars500がモスクワで始まった.クルーである男性6人は,火星への飛行,火星へ着陸し火星の表面を探索すること,そして地球への帰還というミッションを宇宙船,着陸船そして火星の表面を模擬した隔離されたモジュールを用いて,520日間かけて行う.食料や機材はモジュール内に格納されており,電気,水,空気のみが外部から供給される.限られた空間ではすぐに肉体が衰えるため,クルーは1日あたり2時間の運動を行う必要がある.Mars500は人間の忍耐力の試験でもあり,本物の宇宙船で用いる最新技術の試験でもある.
-感想-
 今回の実験はESAとロシア連邦宇宙局などの機関が共同で行うらしい.昨年度の英語ゼミで取り上げられた,火星−地球間の通信を常時可能にする技術の開発もESAによるものだったので,有人火星探査に対するESAの強い意気込みを改めて感じた.

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2010/4/19 President Outlines Exploration Goals, Promise

M2 田村正佳
-要約-
4月15日,アメリカのオバマ大統領は,新しい有人宇宙探査計画を発表した.今後10年で地球低軌道を超える有人飛行に向けた実証試験を,2025年までには月を超えての有人飛行が可能な宇宙船の設計を,2030年代半ばには有人の火星軌道周回飛行を行い,更に数年後には着陸させるという計画である.この計画のため,NASAの予算は今後5年間で60億ドル増額され,そのうちの31億ドルは火星に向かうための大型ロケットの研究開発に使われる予定である.この計画によって生まれる仕事は,前政権が掲げていた計画より2500個以上も多くなると考えられている.
-感想-
有人月面探査,およびISSへの人員輸送用に開発が進められていた宇宙船オリオンは財政悪化を理由に一度は開発が凍結されていたが,今回の発表ではISSの緊急脱出装置に用途を変更して開発が継続されるらしい.脱出装置のみの用途では非常に勿体無い気もするが,これまでの開発が水の泡となる訳ではなさそうなので安心した.

M2 竹腰卓博
-要約-
アメリカのオバマ大統領はケネディ宇宙センターで今後の宇宙開発の概要について演説を行った.大統領は,従来のコンステレーション計画を見直し,月探査を目的としたオリオン有人宇宙船を国際宇宙ステーションからの緊急脱出船に変更することをNASAに依頼した.さらに,2025年までに新たな宇宙船で小惑星の有人探査を行うという展望を述べた.そして,2030年代半ばに人類を火星周回軌道に送り,地球へ帰還させることを成功させ,その後火星への着陸を目指すという目標を掲げた.NASAの予算は今後5年間で60億ドル増加される.
-感想-
スペースシャトルが引退し,アメリカ人は火星に行くそうである.火星に行くための予算の増額で雇用も増えるらしい.宇宙開発で雇用が増えるという状況が日本にいると感覚として掴みにくいと思った.アメリカが有人月探査をやめるので,日本には月を目指して頑張ってもらいたいと思う.ぜひともウサギを捕まえてもらいたい.

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2010/4/12 South Korean rocket will launch again in June

M2 佐藤俊哉
-要約-
 韓国のロケットの打ち上げが6月に再び計画されている.1年程前の打ち上げで,推進系に問題はなかったものの,ロケットのノーズフェアリングの分離に失敗し,人工衛星を軌道に乗せることが出来なかったためだ.打ち上げロケットである「Korean Space Launch Vehicle (KSLV) 」はロシアの技術提供を受けており,第一段エンジン「RD-151」は前回同様ロシアのKhrunichev社が製造し,空路と海路にて発射台のある韓国のNaro宇宙センターへ搬入される予定である.燃料にケロシンを用いる当エンジンは,AtlasロケットやウクライナのZenitロケット向けのエンジンを小型化したものであり,約1670 kNの推力を4分間継続させる.
-感想-
 ロシアはアメリカと並び宇宙開発大国であり,韓国にとっては頼れるパートナーであるとともに簡単には逆らえない存在であろう.KSLVの開発過程には,ロシアが技術保護協定を盾にロケット部品の技術提供を拒否し,やむを得ず韓国側が開発計画を修正したエピソードも掲載されていた.お互いの国益が関与する宇宙開発の難しさを感じる.

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