講師 : マツダ株式会社 技術研究所所長 工学博士 農沢隆秀 氏
司会 : 坪倉 誠 (北海道大学大学院)
要旨
自動車の開発・研究は、暗闇の中の象さんを、いつも探っているようなものと思い
ます。常に判らないことの連続です。これまで、携わってきた自動車の空力も、多く
の謎だらけです。地面を走る車のような鈍い物体は、どのようにして空気抵抗が生じ
ているのでしょうか。また、高速で走る車の中には、しっかり安定して走る車とそう
でもない車があるのは、何故なんでしょうか?。単純に技術的に考えると、飛行機の
ように、形を流線型にすれば、抵抗も少なくなり、安定するかも知れません。しか
し、そのようにしてしまうと、自動車のデザイナーは、がっかりするでしょうし、車
を購入する人には、“すばらしいデザインの車に乗りたい”という気持ちを損なうこ
とになります。ここに、自動車の空気力学の難しさがあるといっても過言ではありま
せん。一方、鳥は、形がいろいろ異なるのに、抵抗も少なく安定して飛んでいます。
とすると、自動車のような形状がもたらす、空気の流れとその振る舞いにはどのよう
な関連があるのでしょう。この謎が解ければ、鳥の形のように、自動車のデザインに
も自由度が増してきます。これらの謎を、コツコツと考えてくると、徐々に、暗闇の
象さんが見えてきました。さて、どんな象さんなのでしょうか。