日本機械学会北海道支部 特別講演会 2013.7.16
北海道支部 支部長 風間 俊治
この度、特別講演会が開催されます。皆様には是非ご参加くださいますようご案内とお願いを申し上げます。
記
主催 : 日本機械学会北海道支部 バイオメカニクス懇話会
主査 : 大橋 俊朗 (北海道大学大学院工学研究院 教授)
共催 : 日本機械学会バイオエンジニアリング部門「計測と力学−生体への応用−」研究会,
日本生体医工学会専門別研究会「バイオメカニクス研究会」,日本機械学会北海道支部
日時 : 2013年7月24日(水) 14:30〜15:50
場所 : 北海道大学大学院工学研究院・工学部(札幌市北区北13条西8丁目)A1-17大会議室
1)14:30〜15:00『マイクロファイバー形状の人工組織「細胞ファイバー」』
講師:尾上 弘晃 博士(情報理工学)(東京大学 生産技術研究所 助教)
【概要】 何かモノを作る材料の形状として,「ひも」は絡めて太くしたり,編んでシートにしたり,二つの別の部品を繋いだりと使い勝手が良く,
ナノスケールの機能材料(カーボンナノチューブなど)から衣服,建築物など,幅広いサイズの日常的なモノづくりの材料として基本的な形状である.
人工的な生体組織の構築を目指す組織工学においても,「ひも」という形状を基本的な材料として,組織を構築する手法は魅力的である.
なぜなら,血管や神経,筋肉をはじめとする生体の重要な組織で,「ひも」形状をベースに構成されているものが多数存在するためである.
そこで我々は,細胞組織を構築するための部品(基本ユニット)としてファイバー形状の人工組織「細胞ファイバー」を提案している.
本講演では,この細胞ファイバーの作製法について述べるとともに,この細胞ファイバーを培養液中で自在に操作する技術を確立し,
その技術をもとに細胞ファイバーを機械織りすることで,「ひも」を材料とするモノづくりが3次元組織構築に応用可能であること を示す.
また,「ひも」という形状を活かすことでの低侵襲な移植方法を提示する.
2)15:00〜15:30『人工細胞は創れるか?―膜タンパク質再構成法とリン脂質非対称膜作製法−』
講師:神谷 厚輝 博士(理学) (公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー人工細胞膜システムグル―プ研究員)
【概要】近年,ゲノム解析が終了し細胞機能解明研究の機運が高まっているが,細胞構造の複雑さから細胞内でのタンパク質や脂質の素反応の解析は難しい.
そこで,タンパク質や脂質等の生体分子を細胞から取り出し,それらの生体分子をバイオ素子とし,細胞膜と類似構造を有するモデル人工細胞膜
(リポソーム)に再構成することにより,生体分子の素反応を観察する研究が盛んに行われている.特に,細胞サイズリポソーム(巨大リポソーム)は
光学顕微鏡下でリアルタイムに可視化できる唯一のリポソームであり,膜タンパク質機能解析研究や原始細胞研究に使用されている.
しかし,古典的なリポソーム作製法では,細胞膜のように非対 称なリン脂質分布のリポソーム作製は原理上不可能であり,
“より細胞を模倣した”人工細胞モデルを創成するために,様々な問題点を解決する必要がある.本講演では,発表者が行ってきた研究である,
バキュロウイルスを用いた配向性を維持した膜タンパク質再構成法と,マイクロデバイスによるジェット水流印加によるリン脂質非対称膜リポソーム作製法を紹介する.
3)15:30〜15:50『細胞折り紙−折紙の折り畳み技術を用いた細胞の立体組織構造の構築−』
講師:繁富(栗林)香織 Ph.D (北海道大学 情報科学研究科)
【概要】近年,細胞を立体的に培養し,3次元的な組織を人工的に構築する技術が,基礎研究のみならず,新薬の開発や再生医療などの分野で重要とされている.
本講演では,高速に細胞の立体構造を構築する方法として,我々が行ってきた「細胞折り紙」技術について紹介する.
「細胞折り紙」技術では,MEMSを利用した微細加工技術を用いてマイクロプレートを作製し,プレート上に細胞を培養する.
その後,隣り合ったプレートにまたがって細胞が増殖すると,細胞内部の牽引力によって,2つのプレートが引き寄せられ 「折り紙のように折り畳む」ように立ち上がる.
この原理を利用して,立方体や正十二面体,管構造などの多面体の展開図を工夫することにより望み通りの多面体構造をした細胞組織を作ることが可能である.
本方法は,管や 袋構造など,中空の細胞組織を高速に作る手法に応用が可能であり,新薬の開発や再生医療,細胞を使った医療器具への応用が期待できると考えている.
連絡先・問い合わせ先 :
バイオメカニクス懇話会主査/北海道大学大学院工学研究院 大橋俊朗 教授 ohashi@eng.hokudai.ac.jp
(011-706-6424)